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2007年09月14日(金) 安倍首相退陣 : 病気が理由なら議員辞職すべき



「 最高司令官は、立ったまま死なねばならない 」

                     ウェスパシアヌス ( ローマ帝国の皇帝 )

An emperor ought to die standing.

                         Titus Flavius Vespasianus



どこかの国の総理大臣に、聞かせたい台詞である。

男が一度やると決めたら、こういう心意気が欲しいものだ。


ウェスパシアヌス は軍人から徐々に出世して、丁度、暴君ネロの自殺後、混乱した社会で大衆から推挙され、皇帝に就いた人物である。

過去の皇帝と違い、貴族的な家系の出身ではなかったので、品位や威厳に欠けるところもあったが、謙虚で温和なため、ローマ市民から愛された。

世界で初めての 「 教育への国庫助成制度 」 を作ったり、世界遺産である 「 コロッセオ 」 の建設を開始したことなどで知られている。

元老院から 「 皇帝の弾劾権 」 を奪ったことで、以降、政権交代は皇帝の死によるところとなり、後々まで皇帝の暗殺が横行する原因となった。

冒頭の言葉は、そんな彼の信条を如実に表しており、最高司令官の責任と権限を謳った名言として、現在まで語り継がれている。


男女平等を建前とする現代社会において、「 男は男らしく、女は女らしく 」 という概念は、過去の遺物とみなされ、葬り去られる傾向にある。

心身を鍛え、タフ に生き続けることが男性の必須条件だった時代は過ぎ、女々しく泣き言を吐き、楽をするのも一つの個性と呼ばれるようになった。

定職に就かない若者、定職はあっても給料をもらうためにだけ嫌々ながら働く中年など、昔なら 「 ダメ人間 」 と呼ばれた人種も、個性と認められる。

そんな不健全社会の極みは、「 目に見えない心の病 」 だと申告すれば、仕事の失敗も、業績不振も、犯罪の懲罰も、すべて帳消しになることだ。

大相撲の横綱でさえ、重圧に耐える義務を要求されず、療養の名のもとに責任から逃れられ、なにもかもが免罪される世の中である。


もちろん、正直に 「 ストレス に打ち克つ胆力が無い 」 と吐露するほうが、見栄を張り通して自殺する馬鹿よりも マシ なことは間違いない。

それに、「 目に見えない 」 から他人には理解され難いけれど、ただの怠慢ではなく病気なのだから、憐憫なく責任を追求するのは非情すぎる。

ただ、本人も社会も自覚する必要があるのは、病気を理由に責任から逃れることは、自殺や病死を防ぐための 「 最後の手段 」 だということだ。

一度 カミングアウト した以上、ほとぼりが冷めた頃に現状復帰したり、過去の責任を清算することなく涼しい顔をするのは許されない。

責任と権限は イコール であって、病気を理由に責任を逃れた者が、他者と同じ権利を要求し、それを認めることは、社会の均衡を乱す元凶になる。


たとえば、精神鑑定の結果により凶悪犯罪の罰を逃れた者が、何の制約もなく社会に放免されてしまうなら、社会秩序の安寧は望めない。

ズル休みを叱責されたのが辛くて、療養に里帰りした横綱が、涼しい表情で土俵に戻り、「 また叱責したら、病気になるぞ 」 と脅すようでは困る。

安倍首相の病名は 「 機能性胃腸症 」 と判明したが、強い肉体的、精神的ストレスを受けたときの 「 心理的要因 」 による神経症である。

内視鏡などで検査しても異常がみられない 「 目に見えない 」 病気であるが、本人の申告と医師の診断がある以上、真実と受け止めるべきだろう。

当然、一国の宰相として職務を果たせる状態にないわけで、ここは昨日の辞任表明を認め、今後は治療に励んでもらうしかない。


ただし、「 総理大臣は激務だが、それ以外の国会議員は気楽な稼業 」 という理屈はなく、病気を理由に退陣するなら、国会議員も辞めるべきだ。

精神病の操縦士が、どんなに上手に操縦しても、「 私の操縦が精神病者の操縦だと思いますか? 」 と尋ねても、彼には人を乗せて飛ぶ資格がない。

それと同様に、いくら政策が正しく、国政への意見が的を得ていたとしても、「 ストレス耐性の無い人間 」 と吐露した以上、国政参加の資格はない。

これは、「 敗者の再チャレンジ 」 を阻む差別ではなく、病気を理由に責任追求を免れた者が背負う 「 けじめ 」 であり、必要な措置だ。

もしも、ほとぼりが冷めた頃、一議員として復帰が認められるなら、後継の首相に 「 危なくなったら病気を理由に逃げろ 」 という悪習を残すだろう。


心を鬼にし、「 仕事上のストレスで病気になった人 」 に対して、とても厳しいことを言うが、仕事でストレスが溜まるのは、仕事が面白くないからだ。

また、仕事が面白くないのは、仕事が順調に消化できなかったり、思わしい成果を挙げられなかったり、職場の人間関係などに不満のあるせいだ。

原因は様々だが、一つだけ共通して言えるのは 「 ご自身にとって適職ではない 」 という事実で、悩んだり、思いつめるぐらいなら辞めたほうがよい。

一時的に重圧から逃れ、ほとぼりが冷めた頃に他者と同様の権利を求めるのは虫が良すぎるし、周囲の顰蹙と不満を買ったり、悪い慣例をつくる。

首相として、活躍したかどうかは別の問題で、「 立ったまま死ぬ 」 覚悟が潰えた今、安倍氏には潔く政界を退いてもらいたいと思う。






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