| 2007年11月23日(金) |
ミシュランガイド東京2008 |
「 フランスでは、料理はレッキとした芸術であり、国民的スポーツです 」
ジュリア・チャイルド ( 料理研究家 )
In France, cooking is a serious art form and a national sport.
Julia Child
食事をする目的は、栄養を摂るだけでなく、それを味わう楽しみにある。
外食の場合は、単に味だけでなく、楽しみを構成する他の要素も大きい。
2007年11月22日、「 ミシュランガイド東京2008 」 ( 日本語版・英語版 ) が刊行され、日本国内だけでなく、世界90カ国で販売されることになった。
05年 ニューヨーク 版が発売された直後、腕試しをしたい調理人が NY に出店した例もあり、今後は、東京に出店するシェフが増えるかもしれない。
また、日本料理を勉強したい外国人シェフが来日するなどして、東京近郊の飲食シーンが活性化する可能性もあるので、経済効果が期待できる。
ミシュランガイドに対する一般消費者の認知度は72%と高く、、「 覆面調査なので、評価が公正である 」 ことも、広く知られているところだ。
他のグルメ本に比べて、「 歴史があるので信用できる 」、「 専属調査員が評価するので信用できる 」 と、その信頼度、関心度は、群を抜いている。
レストラン以外に 「 ホテル情報 」 も掲載されており、レストランの格付けを示す 「 星 」 の代わりに、その快適度が 「 家 」 のマークで表されている。
ここで 「 赤い家 5つ 」 の最上級ランクとして紹介された7軒をみると、残念ながら、そのすべてを外資系ホテルに占められる結果となった。
何年か前の話だが、東京でパーティに参加する機会があって、その一つである 『 フォーシーズンホテル椿山荘 』 に宿泊したが、たしかに良かった。
ただ、建築物の歴史的価値や、そのホテルが歩んできた物語などを鑑みると、今回、最上級評価から 『 帝国ホテル 』 が外されたことを残念に思う。
また、範囲が東京圏に限られるため、日本を代表する名旅館である石川県和倉温泉の 『 加賀屋 』 が世界に紹介されないのも、口惜しいところだ。
レストランにしても、ホテルにしても、いわゆる 「 名店 」 と呼ばれる場所には、独自の 「 哲学 」 があって、それを抜きにしては語れない。
今回、「 星 ( or 家 ) 」 を獲得した何軒かへは訪問したことがあるけれど、すべて、提供する料理やサービスに、特別な 「 こだわり 」 を持っている。
それが、競合店の標準に比べて 「 上質 」 であることも大事だが、さらに、料理人としての高い志や、商道徳、社会倫理などの裏打ちが求められる。
いま、大阪船場の 『 吉兆 』 は営業休止中で、灯りの消えた軒先は、その区画全体に暗い影を落とし、ひっそりと不気味に静まり返っている。
飲食店のランク付けを 「 くだらない 」 と感じる方も多いだろうが、それが 「 名店の誇り 」 を覚醒させ、襟を正す姿勢につながれば、有意義に思う。
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