「 ビジネスの世界において、すべての人は二種類のコインによって
支払いを受ける。 現金と経験だ。
まず経験を取れ。 現金は後からついてくる 」
ハロルド・ジェニーン ( アメリカの企業家 )
In the business world, everyone is paid in two coins : cash and experience. Take the experience first ; the cash will come later.
Harold Geneen
しばらく日記を更新できなかったが、すこぶる体調は良い。
中国とアメリカへ行き、いくつか仕事を片付けてきた。
まず中国は、従来の仕事に加え、新しく投資を考えている事業があるので、たぶん年末までにもう一度、出張することとなるだろう。
アメリカは、サブプライムローン の余波を受けて、保有資産の 「 目減り 」 に対処するため、あれやこれやと面倒な手続きを行ってきた。
ついでに、知人宅を回ったり、過去に何度か説明を受けたのだが、まったく意味不明な研究を続ける娘の顔を見にいったりして、時間が掛かった。
誰に似たのか知らないが、お金よりも、仕事への好奇心に執着するタイプなので、さほど儲からなくても、好き勝手に楽しくやっているらしい。
冒頭の名言が示す通り、たとえ少しぐらい回り道になっても、貴重な経験が積めるならば、そちらを優先するのが正解である。
経験というものを、単純に時間の単位だと考える御仁もいるが、長く働いて何も身についていない人や、逆に、若くして経験豊富な人もいる。
それは、仕事や人生で遭遇する数々の出来事について、どのような姿勢で対処するかという心構えの違いから、生じる 「 個人差 」 なのだろう。
自分で解決しようとはせず、評論家ぶったり、何事も他人まかせにしたり、すべて悪いことは他人のせいにするようでは、経験が蓄積しない。
目の前にある事態から逃げず、できるかぎり自分の行動で解決を図ることの積み重ねが、その人の成長を促し、一回り大きな人格を形成していく。
つまり、どれだけの数の出来事に遭遇したかよりも、自発的に対処した数の違いこそが、その人の経験値になるのだと考えられる。
海外のビジネスマンや経営者の話を聴くと、日本の若者が、総じて貴重な経験をする機会が与えられていないことに気づかされる場面も多い。
長丁場の仕事でも、ただ一度の失敗を恐れて、重要な局面には、なるべく経験の豊富な年長者をあてがい、若者は “ かやの外 ” に置かれている。
政治の世界でも、改革が必要と口にしながら、若く有能で情熱のある人材は 「 青二才 」 と軽視され、老獪な政治家の思うままに動かされている。
活躍の場を与えずに、「 最近の若い奴は駄目だ 」 などと話す御仁も多く、まともに経験させないのだから、必然的に成長しない事例も目立つ。
人口面のみならず、仕事面でも 「 少子 ( 若者の活躍する機会が少ない ) 高齢化 ( 難しい仕事はベテラン任せ ) 」 の著しい社会がそこにある。
ご承知の通り、アメリカは 「 移民の国 」 であり、一世よりも二世、二世よりも三世のほうが、より 「 アメリカ人的 」 な存在に近づくと考えられている。
国語教育には熱心なので、母国語の訛りがある一世よりも、二世、三世のほうが、英語の発音は滑らかで “ アメリカ人らしい ” 感じがする。
そんな事情から、アメリカでは 「 古いものが正しい 」 という概念は少なく、子が親から学ぶだけでなく、親が子から学ぶ習慣がある。
たった三世紀の浅い歴史と、未成熟な文化背景は、過去よりも現在、現在よりも未来に、その価値と重要性を置いているのだ。
日本ではハンディとされやすい 「 若さ 」、「 新しさ 」 が重用され、どんどん機会を与え、ベテランがそれを真似るような事例も珍しくない。
すべて 「 アメリカ型 」 が正しいとは言わないが、日本で仕事をしていると、すぐにベテランが仕切り、新しい発想が生まれ難いのでつまらない。
最近は、古い因習にとらわれず、新しいビジネスやら活動を始めようとする若者を発掘し、投資することに楽しみを見出している。
たぶん、大半はモノにならなかったり、失敗するだろうが、利潤を回収することよりも、一緒に 「 経験する 」 ことに重点を置いている。
一件あたり 7000$ 前後の小額投資を数件と、70000$ 前後の本格投資の両建てで行い、前者は簡単な事業計画を聴くだけで承認している。
これをご覧の方で、名乗りを上げていただいても結構だが、私自身がよほど 「 面白い 」 と思うプランでないと興味を示さないので悪しからず。
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