| 2007年12月16日(日) |
散弾銃乱射事件 : 真相は自殺の巻き添えか |
「 人間は自然の犯した唯一の誤り 」
ウィリアム・シェウェンク・ギルバート ( イギリスの劇作家 )
Man is Nature's sole mistake !
William Schwenck Gilbert
12月中旬は、各局が 「 今年の重大ニュース 」 を編纂する時期である。
大抵、この時期になって、それを覆す大事件が起きるから不思議だ。
昨夜、佐世保で発生した 「 散弾銃乱射事件 」 は、当初、犯人像について様々な憶測が飛び交い、真相を解明するには時間が掛かった。
このところ九州の北部では、暴力団の抗争に関わる発砲事件が多かったので、最初は、敵対する組員を狙った犯行とも思われた。
午後10時からテレ朝のニュースが始まると、NHK側では発表の無かった 「 犯人は外国人風 」 という報道がなされ、大きく風向きが変わった。
司会の 古館 伊知郎 氏、論客の 鳥越 俊太郎 氏 とも、佐世保に米軍基地があることから、明言はしないが 「 犯人が米兵 」 の可能性を示唆した。
次のニュースが 「 地球温暖化問題 」 で、両名が好む 「 嫌アメリカ思想 」 を展開するための、これは ガセ による捏造された伏線に過ぎなかった。
今朝になって、犯人が近所に住む37歳の男であり、早朝に自殺したという事実を知ったのだが、乗り捨てた車には、他に二丁の散弾銃があった。
犯人の 馬込 が、射殺された 藤本 勇司 さん の友人で、当日、彼を現場に呼び出していたことなどから、どうやら 藤本 さん を狙った可能性が強い。
巻き添えで命を絶たれた 倉本 舞衣 さん や、負傷者の方々、事件に遭遇して ショック を受けた子供らは、まったく災難としか言いようがない。
近所の住民によると、普段から奇行が目立ち、精神的に不安定で通院していた 馬込 に、銃の所持許可を取り消すよう、警察に求めていたという。
法律では、精神障害のある者に対し、銃の所持許可を与えてはならないと定められており、今後、佐世保署が責任を問われることは必至だ。
このような事件が起きると、犯行の背景に、知人同士で何らかのトラブルがあったとか、恨みなどの動機が潜んでいるのではないかと、普通は考える。
しかし、犯人が 「 教会 」 で自殺していることや、精神障害者の疑いが強いことなどから、「 別の可能性 」 も浮上してくる。
それは、特定の誰かを殺害したかったのではなく、「 自殺願望 」 を持った犯人が、一人で死ぬのは淋しいので、親友を道連れにしたという説だ。
殺された 藤本 さん の親族によると、二人は仲が良く、最近も 藤本 さん の家で昼食を共にしていたという情報が寄せられている。
いづれにせよ、「 自殺者の九割は精神に異常がある 」 という統計があり、その異常者が死んでしまった以上、すべて真相は闇の中である。
いつの時代でも、「 精神異常者の人権擁護 」 と、「 社会の治安維持 」 は両立が難しく、どこの国も手を焼いてきた問題である。
第二次大戦中、ナチスによるユダヤ人迫害はよく知られる話だが、実は、ユダヤ系以外でも、精神障害者の多くが粛清されていた。
それより以前に、アメリカでも 「 悪性の排除 」 という名目で、精神障害者を強制的に去勢したり、不妊手術を受けさせた歴史的事実がある。
そこまでいくと 「 行き過ぎ 」 だが、感情や行動を抑制できない人々に対し、なんでも同等に権利を与えることは、悲劇の引き金になりやすい。
狩猟のために散弾銃の必要な方や、料理のために包丁が必要な奥様方にとっては、けして 「 凶器 」 じゃないモノが、恐ろしい結果を生むのである。
佐世保署は、犯人の 馬込 が散弾銃を所持するにあたって、「 欠格事項はなかった 」 としているが、はたして、どこまでの調査を行ったのか。
精神障害者といえども、外見的には健常者と変わらず、他人と会話したり、文章を書いたり、それなりに働き、普通に生活している人のほうが多い。
また、映画の 『 レインマン ( 1988 米 ) 』 で ダスティン・ホフマン が扮した自閉症の主人公のように、高度な暗算能力を持つなどの例も珍しくない。
見た目に 「 変 」 でも脳が正常なら狂気に走らないし、「 マトモ 」 に見えても治療を必要とするかぎりは、その危険が拭えないのである。
精神障害者に理解を示せという 「 キレイゴト 」 だけでは、結局、被害者も加害者も救えないのが現実であり、これからも同様の事件が起きる。
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