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2008年01月17日(木) 船場吉兆が民事再生法を申請



「 富を失う者は多くを失う。 友を失う者はさらに多くを失う。

  だが、勇気を失う者はすべてを失う 」

                ミゲル・デ・セルバンテス ( スペインの小説家 )

He who loses wealth loses much ; he who loses a friend loses more ;
but he that loses courage loses all.

                             Miguel de Cervantes



破綻した企業が、「 会社更生法 」 や、「 民事再生法 」 を申請する。

どちらも、法的整理の手続きだが、特徴の違いについてご存知だろうか。


まず 「 会社更生法 」 の特徴だが、会計上、それまでの会社の事業年度が開始時に終了し、以後は、新しい会社としてスタートする仕組みである。

以前の経営陣は退陣の後、責任を追及され、株主は株式を無くすために、新しい会社は旧態の影響を受けず、すっきりと生まれ変わりやすい。

それに対して 「 民事再生法 」 は、開始後も事業年度が中断せず、経営は特例を除くと、原則的に従来の経営陣が継続することになっている。

債権を一度には支払えないが、減額や分割にしてもらえれば乗り切れるといった中小企業の場合、普通は、手続きも簡単な民事再生法を申請する。

この二つ以外に、大企業を対象とした 「 産業再生法 」 やら、事業も負債も放り出す 「 破産 」 や、「 夜逃げ 」 など、各社の対応は様々だ。


食品偽装問題が発覚し、営業休止中の 「 船場吉兆 」 は 8億円の負債を抱え、資金繰りの悪化から、大阪地裁に民事再生法の適用を申し立てた。

負債の内訳は、銀行を主とした金融債務が 6億円で、残る 2億は、取引先の百貨店などから請求されている損害賠償金が大部分を占めている。

営業を休止しているため、食材仕入れなどの一般債権は僅かで、取引銀行などが同意すれば、おそらく近いうちに申請は認められるだろう。

ただし、物議をかもした旧経営陣一族が引き続き携わり、その責任を問い難くなることから、現実に再建できるかどうかは、なんとも疑わしい。

私の知り合いにも 「 吉兆の常連 」 と称する社長さんが何人かいるけれど、問題発覚後は、誰もそのことを口にしなくなっている。


本来、「 吉兆 」 ほどの名店であれば、経営が苦しいなら助けてやろうという贔屓筋が何人もいて、法的整理を仰ぐ必要など、なかったはずである。

もしも、真面目な商売をしていて、どうしても行き詰ったというのであれば、情の深いグルメなお金持ちが、惜しみなく手を差し伸べていただろう。

ところが、いまや彼らにとって 「 常連 」 と名乗ることは、「 自慢 」 どころか 「 恥 」 でしかなく、その思い出は、裏切られた恨みに変わっている。

本気で再建を目指すなら、経営陣を一新するか、高級料亭の看板を下ろしてターゲット層を変えないかぎり、逃がしたお客は戻らないだろう。

富を失い、常連客という友を失い、挙句は 「 革新する勇気 」 までも失った彼らに、はたして再生の道があるのか、まるで想像がつかない。






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