| 2008年01月18日(金) |
「 ガソリン値下げ隊 」 が 「 地球温暖化させ隊 」 になる危険 |
「 話は目的のある航海のようなもので、海図がなければならない。
あてもなく出発した者は、たいていどこにも行き着けない 」
デール・カーネギー ( アメリカの著述家 )
A talk is a voyage with a purpose, and it must be charted. The man who starts out going nowhere generally gets there.
Dale Carnegie
いわゆる 「 嘘つき 」 には、いくつかのタイプがあるようだ。
正直な性格でも、約束が守れなかったりすると、人は 「 嘘つき 」 になる。
大別すると、詐欺師のように 「 最初から嘘と知りつつ、他人を欺く人 」 と、騙す気はなかったが 「 結果的に嘘をついたことになる人 」 に分かれる。
前者は犯罪者、虚言癖のある人、虚栄心の強い人に多く、後者は政治家、多重人格などの精神障害者、無責任な人、計画性の乏しい人物に多い。
いづれの場合も、嘘が発覚するタイミングは、概ね 「 話の矛盾点 」 が露呈した時で、嘘の上手な人とは、話の矛盾に気付かせない人ともいえる。
先に挙げた多重人格者の場合は、簡単に見破れる嘘をついている患者のほうが軽症で、完璧に嘘をつき通せる患者は、かなりの重症である。
嘘の種類は、休日に家族サービスをしなかったとか、デートをすっぽかしたといった類から、二国間休戦協定の破棄などまで、多種多様に存在する。
この数年間で、ダブルスタンダード [ double standard = 二重基準 ] という言葉は日常生活に浸透し、すっかり定着したように思う。
主張に一貫性がなく、立場が変わると反対の主張に回る 「 自己矛盾 」 を指す言葉で、公平性に欠けるなど、悪い意味に使われることが多い。
典型的な例としては、「 自分に甘く、他人に厳しい 」 人物がそれにあたり、たとえば 「 自分は働きたくないが、ニートはけしからん 」 などと仰る。
これは、他人からみると 「 目くそ鼻くそ 」 の違いしか感じなくても、本人は大真面目で価値の違いを主張しているわけで、騙そうという意識などない。
すなわち、ダブルスタンダードを頻発する人も、前述の 「 騙す気はないが、結果的に嘘つきとなる人 」 に含まれ、矛盾だらけだが詐欺的悪意はない。
すっかり浸透したダブルスタンダードに対し、ダブルバインド [ double bind = 二重拘束 ] という言葉は、それほど普及していないようだ。
もともとは精神医学に関する造語として、1950年代に生まれた言葉だったが、いまでは政治やビジネスの話をするときも、頻繁に使用されている。
世の中には、「 あちらを立てれば、こちらが立たず 」 という局面も多いが、そこで悩んだり、苦渋の選択を迫られるのは、人の常である。
たとえば、「 一生懸命に働いた人が高給を得るのは当然だが、所得の低い人にも福祉の手を差し伸べるべき 」 などの、社会的実情が挙げられる。
こういった、正反対に異なる拘束条件を鑑み、一方に偏らないよう、場面によって対処を変えるのは、ダブルスタンダードと似て非なる質のものだ。
民主党は、ガソリン税の暫定税率廃止を目指し、中堅、若手の衆議院議員約 60名で 「 ガソリン値下げ隊 」 なる組織を編成したという。
たしかに、このところ石油価格が暴騰し、消費者の痛手となっているので、この活動は 民主党 が掲げる 「 国民生活第一 」 の思想に反していない。
しかしながら、ガソリンの価格が高いことで、なるべく省エネに努力するほうが、「 地球温暖化対策 」 という観点では、都合の良い面もある。
ガソリン代が安くなることで、ドライブに出かける人が増えたり、無駄遣いを促進する可能性も否めず、そうなったら、相反する別の課題が浮上する。
また、ガソリン税を財源にしていた道路建設、補修の費用は、一体どこから捻出するというのか、彼らからは具体的な方策が示されていない。
うがった見方をすると、これらはすべて 「 衆院選に向けたパフォーマンス 」 に過ぎないのかもしれないが、それにしても、お粗末な気がする。
たとえば、「 生活最優先 」 のスローガンと、「 地球温暖化 」 の二重拘束を解消するには、ガソリン税を維持し、米などの消費税を減免する手もある。
民主党の場合は、「 嘘つき 」 かどうかという問題より、あまりにも対応が 「 場当たり的 」 で、先々の代償がどれほど高くつくか、実に不安なのだ。
年金問題にしても、自民党を叩くのは結構だが、叩けば叩くほどに、彼らが政権を担ったとき、国民の期待するハードルは上がり、立場が厳しくなる。
そろそろ、目先にある国民の関心事を追うより、「 航海の行き先 」 を示す作業を始めないと、「 騙す気はなかったが … 」 という結末に陥りそうだ。
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