| 2008年02月01日(金) |
ギョーザ中毒事件 : 「 中国製 」 の品質 |
「 お金より大事なものは、確かにある。
問題は、そのどれもに、お金がかかるということだ 」
ルイス・A・サフィアン ( アメリカの著述家 )
There are more important things than money … the only trouble is they all cost money.
Louise A. Saffian
よく、「 健康は、お金で買えない 」 と人は言う。
それは正しいが、「 健康を犠牲にすれば、安上がりになる 」 のも事実だ。
中国産冷凍餃子による薬物中毒事件は、当初、「 またかよ 」 という程度の騒ぎだったが、いつになく執拗に、マスコミ各社の報道が過熱している。
たしかに、現在の日本と比べれば、衛生管理、品質管理など、多くの面で、設備にしても、技術にしても、意識の在り方にしても、中国の水準は低い。
だが、一昔前までは、日本も似たような環境にあって、敗戦後の復興と高度経済成長を優先するあまり、公害や、有害な毒物を垂れ流しにしていた。
文化の発達段階として、まず最初に無害な自然環境があり、次に発展過程として公害が起こり、人体や環境にまで関心が向くのは、その後である。
急速な経済成長を続ける中国の現況をみれば、このような問題が起きても不思議ではないし、むしろ、何もないほうが不自然ではないかとさえ思う。
食品関連ではないけれど、私も中国に会社を持っていて、一年に何度かは出張するし、ほぼ毎日、現地社員とは、電話やメールで連絡を取っている。
この話題は、彼らにも伝わっているようだが、いま、現地で最大の関心事になっているのは、旧正月を前に襲った 「 記録的な豪雪 」 の影響である。
例年ならば 「 降雪 0 」 の一部地域が、いきなり 30〜60cm ほどの積雪に覆われるという異常気象で、交通や物流が機能せず、大混乱に陥った。
今年の中国は、2月7日から旧正月に突入するので、いまは日本の感覚でいうと、ちょうど 「 年末の慌ただしさ 」 に追われている時期である。
帰省のこと、大雪のこと、株価が暴落していることなど、中国人民の心配や関心事は別の部分にあり、「 日本の食中毒 」 に、大半は興味を示さない。
どこの国でも、仕事を真面目にやる人、嫌々ながら働く人がいて、衛生面や品質管理の重要さについても、すぐに理解する人、できない人がいる。
そんな中で、民族的な発想の違いがあるとすれば、日本人が 「 不良品 0 」 を当然と考えるのに対し、多くの中国人は、少し違う考え方を持っている。
たとえば、ポスターなどの印刷物を100枚つくるとき、日本の印刷屋さんは 「 一枚でも ミスプリント が混じらない 」 ことを目標に製造し、納品する。
それが中国の場合は、「 2〜3枚は ミスプリント が混じっているかもしれないが、10枚、余分に入れておいたから大丈夫だよ 」 という考え方をする。
徹底的に検査し、「 ミス は無いのが当然 」 だから、不良品を混入させないという発想と、検査しても 「 ミス は起こり得るもの 」 という発想の違いだ。
私が最初に訪中したのは、商社に勤めていた 20年前のことで、その頃に比べると格差は縮小したが、まだまだ 「 不良品 0 」 の領域にはない。
中国製品は、品質が悪いというより、日本人のような繊細さに欠けるため、何事も大雑把で 「 品質が安定しない 」 と表現したほうが、的確だと思う。
ロシアン・ルーレット的な感覚で、何十万、何百万個という餃子の中には、悪い物も混じるが、「 運が悪かった 」 と思って諦めてください … なのだ。
それを日本市場が受け容れるのか、拒絶するのかは、もちろん、日本側に選択肢があるけれど、彼らにも 「 日本へ売らない 」 という選択肢はある。
価格は 「 中国製なんだから安くしろよ 」、品質は 「 日本向けなんだから、すべて最高品質を保障しろ 」 では、理想的な貿易相手といえない。
日本側の悩みは、中国に対する食料品や衣料品の 「 依存度 」 が異常に高く、価格設定も 「 中国製を前提とした相場 」 になっている実情だ。
安全性が認められないために、中国からの輸入を全面的に禁止した場合、諸物価は高騰し、たちまち庶民の生活は苦境に追いやられる。
店頭に並ぶ商品以上に、「 業務用 」 の占める割合は高く、たとえば、持ち帰りの弁当類なども、相当な金額の値上げを余儀なくされるだろう。
いままで、500円のランチを食べていたサラリーマンが、「 食の安全 」 が大事だからといって、1000円のランチに切り替える覚悟はあるのか。
いわゆる 「 安かろう、悪かろう 」 は、ある意味、当たり前の現象であって、たしかに安全は重要だが、当然、その代償は避けられない。
今回の騒動で気になるのは、普段、韓国、中国びいきの報道に明け暮れる売国奴的な某テレビ局が、しきりに中国製品をバッシングしている点だ。
中国の食品工場作業員が 「 手袋をつけず、素手で作業している写真 」 を何度も画面に出し、まるで、とんでもない状況のようにコメントしている。
一般的な消費者のイメージは、「 日本の食品工場では、すべて、手袋をし、衛生管理が徹底されている 」 というものかもしれないが、現実は違う。
そんな工場は日本でも “ 全体の一部 ” であり、大半は、それほど衛生的には感心しない作業場の中で、庶民の食べ物がつくられているのだ。
夏祭りの屋台で売られる タコヤキ やら、ヤキソバ などもそうだが、中国と変わらない環境下で調理されたものを、我々も普段から口にしている。
今回、某テレビ局が中国製品の不安を煽る狙いは、中国製品を一時的に市場から締め出し、物価を高騰させ、庶民生活を脅かすためではないか。
そして、生活の苦しくなった国民が政府に不満を抱き、一気に政変を起こすための “ 恣意的な誘導 ”が背景にあるような懸念を感じる。
既に、ノセられやすい人々からは、「 国民の健康が脅かされてるんだから、外交筋を通じて中国政府に文句を言え 」 といった、不満の声も出ている。
ちなみに、いまごろ文句を言っても、中国の要人は旧正月 ( 日本のお正月と同じ ) の準備に忙しく、マトモにとりあってくれないだろう。
さほど過剰に心配しなくても、頻繁に中国で 「 おかしなモノ 」 を食べている私が平気なように、滅多に死にはしないから大丈夫である。
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