Tonight 今夜の気分
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2008年02月03日(日) ギョーザ中毒事件で廃棄される 「 無害 」 の中国製食品



「 腹いっぱい食べることが、目的の達成だった。

  酔っ払うことは、勝利だった 」

                ブレンダン・ビーアン ( アイルランドの劇作家 )

To get enough to eat was regarded as an achievement.
To get drunk was a victory.

                                Brendan Behan



これは、彼が 「 1930年代のダブリン 」 について語ったコメントである。

食べるのに精一杯の状況では、何よりも食糧の確保が優先される。


ギョーザ中毒事件の調査が進むにつれ、毒物は製造過程でなく、出荷後の流通段階で混入した可能性が高いという推察が、囁かれ始めている。

袋の製造や印刷に詳しい知人によると、冷凍食品の外装袋は多層構造になっており、製造工程で 「 穴が開く 」 事故は、まず考えられないという。

我々のような素人は、「 それは日本の話で、中国ならあり得るのでは 」 と考えがちだが、その可能性も極めて低いようだ。

なぜならば、そのような袋の製造は機械化されており、袋の原料も機械も、中国製が存在しないので、ほぼ日本製と同レベルのものが仕上がる。

つまり、袋に穴が開いていて、外側に毒物が検出されたのなら、何者かが故意に穴を開け、中身に毒を入れようとした公算が高くなるわけだ。


そうなると、中国で輸出前に混入されたか、日本で輸入後に混入されたか判別し難いが、輸入時には検査・検疫があるため、後者の線が濃厚だ。

事件発覚の直後、「 国民の健康が脅かされたのだから、中国政府に抗議しろ 」 と吼えていた御仁もいたが、それでは、赤っ恥もいいところである。

いづれにせよ、今回の事件で明らかになったことは、僅か一種類の中国製食品から毒物が検出されたことで、中国製すべてが不安がられる事実だ。

現代の日本人にとって、「 食の安全 」 といえば食品の安全性を意味するが、世界には、明日の食糧さえ、ままならない人々が大勢いる。

彼らとて、安全なものを食べたいとは願っているが、ごく一部分の不良品が見つかったからといって、他の良品まで廃棄する異常性は理解されない。


1995年に、アメリカの民間シンクタンクである 「 地球政策研究所 」 所長の レスター・ブラウン が、『 誰が中国を養うか 』 というレポートを発表した。

内容を要約すると、中国の人口は今後も増え続け、さらに、経済的発展で国民の生活水準が向上するため、たんぱく質、食肉の摂取が増えていく。

すると、食肉用の家畜を育てるために飼料用の穀物需要も増えるのだが、工業化の進展によって農業用地が減り、その供給が間に合わなくなる。

そうなれば、2030年の時点で中国は 「 2億トン 」 以上の穀物不足が発生する危険が高く、世界規模の食糧危機に陥るというのがレポートの主題だ。

ちなみに、世界全体の穀物総輸出量は 「 約 2億3千万トン 」 で、こうした水準では、2030年の中国の穀物需要量さえ満たせない状態にある。


幸いにも、レポートの発表から10年以上経ったいま、ブラウン が懸念したような中国の食糧危機は起きていないが、その兆候はたしかにある。

ほとんどの日本人は知らないだろうが、すでに中国は 「 食糧輸入国 」 に転落しており、工業化による農地の減少も、歯止めが利かなくなっている。

2030年の中国は人口のピークを迎え、いまより2億人増えて15億人になるため、抜本的な農業改革を行わないかぎり、食糧危機に直面するだろう。

日本は現在、世界最大の穀物輸入国であり、他のG7諸国が、穀物の高い自給率を保っているのに対し、日本の自給率はわずか3割にも満たない。

つまり、近い将来において、食糧危機になった中国と日本の間で、熾烈な 「 食糧争奪戦 」 が起きる確率は高く、我々には準備が必要なのである。


日本の姿勢として、現在のように 「 中国は不衛生でけしからん 」 と文句を言うだけで、食糧自給率を上げる努力をしないのは大問題である。

お茶碗一杯のご飯をつくるためにも、ペットボトル135本分の水が必要で、日本が食糧自給率を高めれば、穀物輸出国の水不足も緩和される。

現在の日本は、お金で発展途上国から水や食糧を奪っておいて、その品質が悪いと文句を並べては、気に入らないから捨てるという体質にある。

食糧を輸入するのなら、多少の不安があっても黙って食べるか、どうしても嫌だったら、輸入せずに賄えるだけの自給率を確保すべきだろう。

食中毒も他の病気と同じで、老人や子供など、体力の弱い人がなりやすいので、私のように 「 何を食っても当たらん 」 まで鍛えるのも一策である。






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