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2008年02月13日(水) 韓国 : 南大門 焼失で問われる危機管理



「 無知な人間を議論で負かすのは不可能である 」

                ウイリアム・G・マッカドー ( アメリカの事業家 )

It is impossible to defeat an ignorant man in argument.

                             William G. McAdoo



世の中は、「 正義 」 や 「 倫理 」 が通じる人間ばかりでない。

彼らに説得を試みたり、改心を期待しても、その効果は薄い。


危機管理には 「 レベル 」 の設定があり、完璧を目指すほど費用が掛かるため、どの水準で妥協するかが、たえず悩みの種となる。

また、危機管理を強化することによって、「 危険を及ぼさない者 」 までもが窮屈な思いを強いられたり、不便を被るケースも珍しくない。

わかりやすい例を挙げると、以前、哺乳瓶に爆発物を詰めて飛行機に搭乗しようとしたテロリストがいたせいで、液体の持ち込みが禁止された。

人類の99%以上が、そんな馬鹿げた行為を実行しないと知りつつも、空の安全を守るためには、利用者全員が規制を受ける羽目となるのだ。

初歩的な危機管理は、「 やろうと思えば出来るけど、普通はしないよね 」 という前提で組まれており、段階が増すほど、「 実行不可能 」 な形になる。


韓国を代表する国宝 「 南大門 ( 正式名 : 崇礼門 ) 」 が、以前にも別の史跡に放火した前科がある 69歳の男によって放火され、焼失した。

以前の放火事件を、精神鑑定の結果 「 執行猶予 」 付で放免された男は、その後も文化財を物色し続け、警備の甘い南大門に目をつけたという。

ソウルのシンボルともいえる南大門を全焼させるため、用いられた道具は、なんと、脚立1台、シンナー1.5リットル、ライター1個だけであった。

見た目は普通の高齢者で、取調べた警察官も 「 外見からは、あんなことをする人物に見えなかった 」 と証言している。

現在、韓国政府に対し 「 危機管理に問題あり 」 との抗議が殺到しているようだが、それは、貴重な歴史的財産を失った国民の悲痛な声でもある。


朝鮮日報 ( 韓国の日刊紙 ) の日本語版サイトを見ると、この事件が韓国の国民に与えた衝撃と、動揺の大きさが伝わってくる。

コラムには、「 精神的な病や悩みを抱えた人物が決心さえすれば、いつ、どこでもすぐに放火でき、国宝を廃虚に変えられるのが韓国だ 」 とある。

しかしながら、たとえば日本でも 「 やろうと思えば出来る 」 わけで、奈良や京都の神社、仏閣、様々な歴史建造物にも、その危険は潜む。

警備が手薄だとか、危機管理面の意識が足りないと言うが、市民が気軽に近づけるからこそ、その土地のシンボルになっている側面もある。

周囲に鉄柵を張り巡らせ厳重に警戒し、誰も近づけないようにしておけば、たしかに放火はされなかったかもしれないが、建物の魅力も半減する。


文化財に火をつけたり、父親が無理心中を図って息子の手首を切断したり、通勤電車に飛び込んで自殺したり、女子中学生をレイプする者がいる。

そのすべてが 「 やろうと思えば出来る 」 ことだが、圧倒的大部分の人間が 「 やろうと思わない 」 ことであり、実行する人間の心理は理解できない。

稀な異常者が起こす悲劇を防ぐ為、全て文化財を24時間体制で警備し、子供の手首を鋼鉄で覆い、電車を廃線にし、基地を追放すべきか。

現実的には、いくら頑張って危機管理を強めたところで、「 マトモな人間が考えもしない暴挙 」 を完璧に防ぐ手立ては、あり得ないだろう。

それに、ごく一部の異常者から社会秩序を守る方法が、「 圧倒的大多数のマトモな人間に、不便を強いること 」 ばかりでは、あまりにも理不尽だ。


韓国の国民を襲った悲痛は理解するが、怒りの矛先を 「 文化財の警備 」 に向けるのは、少し、筋道が違うように思う。

南大門の事件に関しては、現場の巡回警備よりも、「 文化財を狙って放火する異常者 」 がいることを知りながら、野放しにした法曹界が問題だ。

放火、性犯罪、薬物中毒、自殺癖などは 「 再犯性が高い 」 ことが周知の事実であり、本来は、放免後も継続的に監視を続ける必要がある。

刑務所やら精神病院などの 「 隔離施設 」 に収容されるべき人物を、人権擁護の名のもとに 「 シャバ で泳がせる 」 から、異常な事件が絶えない。

たとえ初犯であっても、触法する人物には、必ず 「 兆候 」 というものがあるので、国や地域が監視の目を強めることこそ、危機管理の有効な手段だ。






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