2008年04月22日(火) |
死刑判決と 「 命の尊厳 」 |
「 規律なき人生を送る者は、尊厳なき死を迎える 」
アイスランドの諺
He who lives without discipline dies without honor.
Icelandic proverb
この世に 「 生まれてこないほうがよかった人間 」 は、いない。
ただし、その命を 「 抹消したほうがよい 」 ところまで貶める人間もいる。
1999年4月、山口県光市の会社員 本村 洋 さん ( 当時 24歳 ) 方で、妻の 弥生 さん ( 同 23歳 ) と、長女 夕夏 ちゃん ( 同 11ヶ月 ) が殺害された。
1審の山口地裁、2審の広島高裁判決は、検察の死刑求刑に対し、加害者の 「 犯行時 18歳 」 という年齢などを理由に、無期懲役を言い渡した。
しかし最高裁は、2006年6月、上告審判決で 「 加害者が少年だったことは死刑回避の決定的事情とまでは言えない 」 と判断する。
結果、「 2審判決の量刑は甚だしく不当 」 として破棄し、審理は同高裁に差し戻され、ようやく今日、差し戻し控訴審判決が広島高裁で下された。
楢崎 康英 裁判長 の口から 「 被告人を死刑に処する 」 と極刑が言い渡された被告は、退廷の直前、傍聴席の 本村 洋 さん に頭を下げたという。
被告が法廷を出るとき、傍聴人の中から拍手が湧き上がったのは、事件を知る多くの人々が、この判決を 「 妥当 」 と感じたからだろう。
以前にも書いたが、私は 本村 洋 さん にお会いしたことがあり、その他の 『 全国犯罪被害者の会 ( あすの会 ) 』 の方々からも話を伺っている。
報道でお気づきの方も多いだろうが、彼自身、けして ヒステリック な感情や、加害者への復讐心から極刑を求めていたわけではない。
ただ、反省の色も無く、罪を逃れるために詭弁を弄するばかりの加害者には、それ ( 極刑 ) 以外の “ けじめ ” が考えられないだけのことだ。
私も含め、今日の判決文に満足された方は多いだろうが、その大部分は、加害者が真摯に罪を認め、深く改悛することに期待していたはずである。
判決後、裁判長から次々と主張を退けられた形の弁護団は、予想通りに 「 極めて不当な判決だ 」 と記者会見し、不満を露にしている。
主任弁護人の 安田 好弘 弁護士 は、死刑反対論者として知られており、人権だの、生命の尊厳だのではなく、自己の哲学を賭けて争ってきた。
私も、「 たとえ犯罪者といえど、人命は尊ぶべし 」 と思うが、加害者の死をもって償うことでしか、守れない 「 生命の尊厳 」 もあると思う。
突然、理不尽に、愛する家族の 「 尊厳ある生命 」 を奪われた 本村 さん が評価する判決に、痛みを知らぬ弁護人や、我々が口を挟む余地はない。
すべては終わったことと、被告ならびに弁護団は、潔く、粛々と刑の執行を受け入れることで、事件の “ けじめ ” をつけてもらいたい。
かつては日本にも、アメリカのような 「 終身刑 」 があり、もし、その制度が続いていたら、死刑廃止論に同調する人の数は、もっと多かっただろう。
現行法の 「 無期懲役 」 は、永久に刑務所から出られないという意味ではなく、あくまでも 「 有期 」 に対する 「 無期 」 でしかない。
つまり、刑の期間が決まっていないということを言っているに過ぎず、その平均刑期は 「 約19年半 ( 仮釈放の場合 ) 」 というのが実態だ。
最も長い 「 有期懲役 」 は 20年 だから、下手をしたら結果として、無期刑より有期刑のほうが、長く入る可能性も考えられる。
そのうえ、現在、日本では 6万人以上が 「 塀の中 」 に暮らしており、収容定員をオーバーしているため、総体的に刑期は短縮される傾向にある。
法務省は 「 終身刑 」 について、“ 緩やかな死刑、そのため導入しない ” という考え方を示しており、今後、導入される目処もない。
年間、約 2万人以上の受刑者が刑務所から出所するが、データによると、そのうち、5年以内に約半数の者が再び罪を犯し、刑務所に戻っている。
軽微な罪ならともかく、凶悪犯罪に手を染めたうえ、改悛の様子も認められない輩には、社会秩序の防衛策として、現在は 「 死刑 」 しか手段がない。
本当は、特に少年犯罪の場合、このような事態が起きる前に、親や、教育に携わる人々が、もっと 「 命の尊厳 」 について、躾をすべきなのである。
年間 3万人以上の 「 自殺者 」 が出る日本では、子供に対して命の尊厳を語ることも難しいが、精一杯に生きる姿を、大人が示すしかないだろう。
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