2008年04月24日(木) |
硫化水素ガスによる相次ぐ自殺報道 |
「 あなたが育った家庭は、今後、あなたが持つ家庭ほど大切ではない 」
リング・ラードナー ( アメリカのジャーナリスト、小説家 )
The family you come from isn't as important as the family you're going to have.
Ring Lardner
1999年3月27日、俳優の 沖田 浩之 ( 享年36歳 ) が首吊り自殺した。
芸能人の自殺は珍しくないが、彼の死には 「 驚くべき特徴 」 があった。
当初、この自殺の動機は 「 借金苦 」 と伝えられたのだが、順調に仕事をこなせば返済できない金額でもなく、どうにも不可解な点が多い。
彼の死には、借金苦だけでない “ 何か ” があると、周囲は感じていたそうだが、その後、注目すべき 「 衝撃の事実 」 が判明した。
数十年前、弁護士だった彼の祖父は、担当した事件絡みで正当性を主張するために、自殺を遂げている。
また、会社を経営していた彼の父は、自分の生命保険金で会社の損失を補填しようとして自殺、その6年後、今度は彼の兄も自殺した。
つまり彼の一家は、無理心中などと違い 「 別の場所 」、「 別の時間 」 で、親子3代に亘り “ 4人の自殺者 ” を出していたのである。
医大教授らで構成された 『 健康家族研究チーム 』 によると、自殺傾向の遺伝は、科学的にも肯定されているのだという。
自殺者と、その家族の DNA サンプル を多数用いて研究を行ったところ、いづれにも自殺を生じやすい 「 精神疾患傾向 」 が見られた。
感受性遺伝子の影響で、うつ病などの神経症が ( 特に男性に ) 遺伝しやすいことは既成事実で、自殺衝動に結びつきやすいことも証明されている。
もちろん、遺伝による自殺傾向があっても、100%自殺するというわけではなく、自殺行為に及ぶまでには、精神を暴発させる引き金が存在する。
沖田 浩之 の場合は、芸能界という得意な場所に身を置いたことでの葛藤や、噂されている借金苦などが、その引き金になったのかもしれない。
このところ、自殺に関する報道が多く、自殺ではないが 「 死刑になりたくて人を殺した 」 などという “ 間接自殺型の殺人 ” も、後を絶たない。
山口県光市の母子殺人事件でも、被告の母親が自殺しており、罰を恐れぬ病的な性向の背景に、「 遺伝説 」 を唱える学者もいるようだ。
こういった学説は、“ 差別や偏見につながる ” という理由から、世間的に堂々と公言し難い空気があるため、一般的にあまり知られていない。
だが、欧米の一部など 「 精神異常者の婚姻を禁じた歴史のある国々 」 の自殺率が低く、そうではない日本などの自殺率が高いことも、事実である。
精神疾患、自殺傾向の遺伝性に加え、子供は 「 親の姿勢をみて育つ 」 という側面を持つので、この問題の因果関係は、あながち無視できない。
幸いなことに多数の人は、「 自分次第で運命を変えられる 」 という事実を知っているし、また、そのための努力を惜しまない傾向にある。
冒頭の名言が示すように、大事なことは、自分が育った環境なのではなく、これから自分が創り上げていく環境であり、過去よりも未来こそが重要だ。
ただ、そのような遺伝的血脈にある人は、自殺衝動などの激しい感情や、行動を理性でコントロールする心構えを、少し意識されることが望ましい。
子供への虐待は言うに及ばず、偏った思考を押し付けたり、自暴自棄的な態度を示したりすると、その性向が受け継がれる危険も大きいのである。
硫化水素ガスによる連日の自殺、警察官による拳銃自殺など、自殺報道の相次ぐ中、「 環境に打ち克つ姿勢 」 に、多くの人が目覚めて欲しい。
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