Tonight 今夜の気分
去るものは追わず、来るものは少し選んで …

2008年05月31日(土) 「 便所の落書き 」 が凶器になるとき



「 真理を知る人が必ずしも、真理を愛するとは限らない。

  真理を愛する人が必ずしも、真理を好むとは限らない 」

                              孔子 ( 中国の哲学者 )

They who know the truth are not equal to those who love it,
and those who love it are not equal to those who delight in it.

                                     Confucius



マスコミの一部では、ブログを 『 便所の落書き 』 と呼んでいるらしい。

なるほど、上手いこと言うものである。


まず、大半のブログは匿名で書かれており、作者の氏素性が明らかでないことから、情報の 「 信頼度 」 という点で 『 便所の落書き 』 に近い。

新聞や雑誌のように、中立性を求められることもない為、個人的な価値観、先入観に基づいた文章が多いのもブログの特徴だ。

匿名性を悪用し、中傷や悪態、悪意に満ちた文章を並べる者がいる一方、善意の書き込みを 「 気に入らない 」 ために、中傷だと批判する者もいる。

ブログの場合、何が信頼できるか、何が正しいかは 「 読む人の判断 」 に委ねられており、どちらかというと責任の所在は 「 読み手側 」 にある。

私も、このような文章を書き始めて7年目になるが、これを読んだ人々から 『 便所の落書き 』 と評されても、「 上手いこと言うなぁ 」 と思う次第だ。


公益を重んじる大手メディアとは違って、数々の制約を受けない個人発信のブログには、大手が 「 書きたくても書けないこと 」 を書ける長所もある。

新聞や雑誌の記者からみた場合、ブログ作家は 「 文章を書く素人 」 かもしれないが、ほとんどの人は、「 何かの専門家 」 であることも事実だ。

たとえば、医学的な解説について、プロの新聞記者が書くことよりも、作家としては素人でも、医者が書く内容のほうが、より真実に近いケースもある。

また、たとえそれが真実でも、同じ医者が 「 実名を名乗り出て雑誌に掲載できる記事 」 と、諸般の事情で 「 掲載できない記事 」 がある。

そんな 「 専門家の本音 」 が垣間見れるところも、ブログの特徴なのだが、冒頭の名言が示す通り、必ずしも万人に真実が好まれるとは限らない。


仕事柄、カウンセリングの勉強を続けており、精神科医の著書を読んだり、講演を聴いたり、その後で質疑に答えてもらったりしている。

たまに、同じ人物の著書でも、「 一般人向け 」 に書かれた書店販売用の本と、「 研究者向け 」 に書かれた内容が、微妙に違うケースがある。

その矛盾について質問すると、「 真実を患者に伝えるのが、必ずしも得策とは限らない 」 という回答が返ってきて、精神医学の難しさを痛感した。

昔と違い、他の医療分野では 「 患者にとってショックな事実 」 であっても、できるだけ医者は正直に話すことが求められている。

しかしながら、いまだに精神治療の分野だけは、「 歓迎されない真実 」 を隠したり、誤魔化したりする必要があると、現場で認識されているようだ。


北九州市の女子高に通う同市在住の1年の女子生徒 ( 16 ) が、ネット上に 「 死ね 」 と書き込まれたのを苦に自殺したことが分かった。

詳細は不明だが、いくら 『 便所の落書き 』 といえども、「 死ね 」 などと書くのは問題で、それが事実なら、書き込んだ人間の罪が問われるだろう。

この学校の校長は、「 学校にいじめは全くなかった。生徒にもインターネットの怖さを教え、ブログなどのサイトを利用しないように指導した 」 という。

実は、精神科医らの間でも 「 インターネットの弊害 」 は話題になっていて、うつ病や、精神疾患のある人物のネット接続は、好ましくないとされている。

今回の事件のように、ネット上で 「 死ね 」 と書かれただけで、自殺にまで追い込まれる人がいる以上、そこは危険な場所と言わざるを得ない。


以前、私が相談を受けた人物 ( 20代前半の男性会社員 ) も、ネット上のトラブルが原因で 「 抑うつ状態 」 に陥り、深刻な悩みを抱えていた。

私の場合、病気を治す 「 治癒的カウンセラー 」 ではなく、仕事上の相談に乗る 「 産業カウンセラー 」 なので、彼らを治療することはできない。

どうしようかと困っていたら、様子をみかねた彼の父親が、彼の携帯電話とパソコンを廃棄し、一切、インターネットに接続できない状態にした。

この時代、携帯電話が無いというのは不便な気もするが、その結果、彼は元気を取り戻し、先日も連絡があったが、仕事に精を出しているという。

父親の談によると、それは 「 精神科医の勧め 」 による手段だったそうだが、患者本人に医師が 「 ネットを止めなさい 」 とは言わなかったらしい。


所詮 『 便所の落書き 』 だと思えば、腹も立たないことが、死にも追い詰められるような人たちには、ネットやブログを過大評価する傾向もみられる。

物事には様々な見方があり、人間には色々な意見があること、それは必ずしも自分の気に入るものや、共感できるものではないという事実。

自分で正しいと思い込んでいても、思わぬ角度から反論されたり、立場が変われば 「 正義が悪に 」 変わることだって珍しくない。

そして、そのすべては、お互いに名乗りあい、顔を見合わせて話し合うことのない 『 便所の落書き 』 の仮想世界で起こっている現象に過ぎない。

なんでもないことで気を病む 「 ピュアな人々 」 が首を突っ込むには不向きな環境であり、ストレス耐性の弱い方は、ネットに接続しないほうがよい。






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