Tonight 今夜の気分
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2008年06月02日(月) 「 死ね 」 も有害、「 死にたい 」 も有害



「 人生の悲劇は、まだ生きているのに心が死んでいるということだ 」

                  アルベルト・シュバイツアー ( ドイツの医師 )

The tragedy of life is what dies inside a man while he lives.

                                Albert Schweizer



医師であり、伝道師であり、バッハ研究の世界的権威としても知られる。

アフリカでの医療活動、難民救済から、ノーベル平和賞も受賞している。


小さい子供に、シュバイツアーなどの 「 偉人伝 」 を読ませるのは、善行へ導くとか、道徳心を植え付ける以上に、とても大きな意味がある。

偉大な先達に 「 憧れ 」 を抱くことで、生きる勇気を養い、早く大人になって社会に役立ちたいという意識を、子供たちは学んでゆく。

小学校低学年の頃の私は、ジャンルを問わず 「 偉人伝 」 を読むのが好きで、そこから吸収した多くのものが、現在の糧になっている気がする。

大人向けに書かれた本と違い、子供の読む 「 偉人伝 」 では、対象となる人物が “ 聖人 ” のように描かれ、人間臭い生々しさは省略されている。

きっと、大人が読めば嘘臭くて、リアリティに欠けるところも多いのだろうが、実在した人物の生き様に触れることで、子供は生きる道標を得るのだ。


昔と違って、今の子供たちには娯楽の幅が広く、本を読む以外に、たとえばDVDを観たり、TVゲームに興じるとか、「 一人遊びの選択肢 」 が増えた。

ここで問題は、どちらかというと 「 有害 」 だったり、なんらかの 「 弊害 」 を伴うものに、その選択肢が広がっていったところだろう。

自民党と民主党は、「 18歳未満の子供をインターネットの有害サイトから守るための議員立法 」 の共同法案の修正協議で合意した。

法案は、携帯電話会社に対し、子供がネットで有害情報を閲覧できないようにするフィルタリング ( 閲覧制限 ) サービスの提供を義務づける。

パソコンメーカーには、フィルタリングソフトの組み込みを義務づけ、出会い系サイトなど有害サイトに絡み、子供が事件に巻き込まれるケースを防ぐ。


焦点となった 「 何が有害情報に当たるか 」 の選別基準は、憲法が定める 「 表現の自由 」 に配慮し、民間の第三者機関が策定するらしい。

今国会で法案が成立すれば、18歳未満の子供は 「 出会い系サイト 」 や 「 自殺サイト 」 など、インターネット上の有害サイトを閲覧できなくなる。

大いに結構な話だが、少し疑問に感じるのは、そういったサイトを 「 有害 」 と認めつつ、そのまま放置する方針であるところだ。

世間に 「 有害 」 なものが有ると知りながら、「 子供に見せなければよい 」 という判断で済ませるのは、いかがなものか。

それが、たとえば 「 H な画像 」 とか、「 大人の愉しみ 」 的な範囲ならば、子供にとって有害でも、大人にとっては許される論理も通るだろう。


しかしながら、「 自殺サイト 」 なんてものは、むしろ子供より大人に及ぼす悪影響が大きいはずで、フィリタリング云々の話ではない。

また、ここでいう 「 自殺サイト 」 の定義は、自殺のノウハウを伝授したり、集団自殺を募ったりするものに限定されている。

私が眺めて 「 有害 」 と感じるのは、そんな 「 死ね 」 というサイト以上に、繰り返し自堕落に 「 死にたい 」 と愚痴るサイトの存在である。

生きる気力を失いつつある者に 「 死ね 」 と命じても、本当に自殺する人は少ないが、「 死にたい 」 と愚痴るヘタレなサイトに、誘引される人は多い。

死ぬ方法を伝授したり、「 死ね 」 と書かれたサイトを抹消するのと同時に、生きていても仕方がないとか、「 死にたい 」 と愚痴るサイトも葬るべきだ。


ようするに、「 自殺サイト 」 だから有害なのではなくて、「 自殺 」 という行為そのものが有害なのであって、美化したり、ほのめかすのも禁止すべきだ。

また、特に子供には 「 有害サイト 」 を排除するだけでなく、将来の夢や、生きる勇気を与える 「 優良サイト 」 の推奨も制度化すべきだろう。

一部の 「 有害サイト 」 の悪影響で、ネットに対する偏見や警戒心ばかりが先立ち、そこから害悪を取り除くことばかりに終始している傾向が強い。

今の時世で、子供たちに 「 本を読め 」 と強制するより、時代の波を素直に受け容れながら、「 良いサイトを閲覧しなさい 」 と勧めるほうが自然だ。

冒頭の名言が示すような、「 生きているのに、心が死んでいる大人 」 にも、生きる勇気を与える 「 優良サイト 」 の推奨が、必要な時代かもしれない。






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