Tonight 今夜の気分
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2008年06月07日(土) 映画 『 ザ・マジックアワー 』 は面白い



「 私は、自分がなりたい人の真似をした。

  ついにその人になりきるまで、真似をした。

  その人が私になったのかもしれない 」

                     ケーリー・グラント ( ハリウッドの俳優 )

I pretended to be somebody I wanted to be until finally I became that person.
Or he became me.

                                    Cary Grant



彼は、俳優としての 「 個性を創り出す方法 」 について、こう答えた。

稀代の二枚目俳優だが、アクションからコメディまで、幅広く活躍した。


封切初日に 三谷 幸喜 監督 の 『 ザ・マジックアワー 』 を劇場で観たが、予想通り、ほぼ満席に近く、事前に良い席を予約しておいて正解だった。

これからご覧になる方のため、「 ネタばれ 」 になる要素には触れないが、無条件に笑える映画として、オススメであることは間違いない。

最近、流行の若手コメディアンが 「 まったく面白くない 」 という辛口の方も、この映画なら十分に楽しめるはずである。

また、特に、往年の日本映画が好きな “ オールドファン ” には、古きよき時代の郷愁を誘う場面も用意されており、必見の一本といえるだろう。

ほとんどの映画はそうだが、ご家庭のテレビで観るより、映画館の大画面で観てこそ醍醐味が味わえるので、ぜひ、劇場へ足を運んでもらいたい。


三谷 監督 作品は、脚本の秀逸さで楽しめるものが多いが、今回の作品は 「 先の展開が読める脚本 」 で、物語の流れは “ ベタ ” である。

脚本の緻密さよりも、個々の俳優による演技や台詞で笑いをとる手法が、この作品では随所に盛り込まれており、そこに新鮮さを感じる。

主演の 佐藤 浩市 も、一昨年に公開された 『 有頂天ホテル 』 に続く 三谷 監督 作品への出演だが、前作を凌ぐ力演で、圧倒的な存在感を示した。

ワンカット出演の端役に、コッソリと 「 有名俳優 」 を配しており、観客には、それを探す楽しさもあるので、終始、画面から目を離せない。

強面を演じた 西田 敏行 や、寺島 進 が、その役柄をシリアスに演じるほど 「 笑い 」 に結びつく演出には、三谷 監督 の才能が光っている。


物語の後半で、佐藤 浩市 と絡む脇役の老人を、柳澤 愼一 という俳優が演じているのだが、40代以下の方々には、ご存知ない方が多いだろう。

もともと ジャズ歌手 だったが、昭和30年代〜40年代に俳優、声優として活躍した二枚目で、軽妙なコメディの主役、脇役を多く演じていた。

名前を聞いて ピン とこない人も、テレビ 『 奥様は魔女 』 の 「 ダーリン 役 の 声優 」 といえば、なんとなく声の印象は思い出せるだろう。

高度成長期を象徴するような、陽気で快活な声と容貌は、“ あの時代 ” に重用され、目立った代表作はないが、間違いなく 「 時代の顔 」 であった。

最初に 「 進駐軍クラブ 」 で ジャズ を唄ったのは、戦災孤児の慰問費用を捻出するためで、芸能生活58年になる現在も、福祉活動を続けている。


タイトル の マジックアワー とは、映画の専門用語で 「 夕方、太陽が沈んだ直後のこと 」 であり、それは “ 一番美しく撮れる時間帯 ” とされている。

つまり、昼と夜との間に訪れる短い “ 瞬間 ” のことだが、人生にも、そんな 「 光り輝く瞬間 」 があって、その時間が過ぎてしまうと、物悲しく感じる。

最初に書いた通り、「 ネタばれ 」 に繋がるので書かないがおくが、映画の後半では、「 マジックアワー が過ぎたとき 」 の心構えが語られている。

それを語るのが 柳澤 愼一 なので、本日は、その意味をより理解しやすくする一助になればと思い、彼の略歴について紹介した。

もちろん、そういった予備知識がなくても 「 理屈抜きで爆笑できる作品 」 に仕上がっているので、ぜひ、映画館で楽しんでいただきたいと思う。






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