2008年06月12日(木) |
ネット上の自殺予告・犯罪予告を検知できる ソフトウエア |
「 体験が判断力をつける。 卓越した判断力は、苦い体験から生まれる 」
ボブ・パックウッド ( アメリカの上院議員 )
Judgment comes from experience and great judgment comes from bad experience.
Bob Packwood
警察の捜査部門には、おおまかに分けて、三種類がある。
それは、「 刑事警察 」 と、「 生活安全警察 」 と、「 警備警察 」 だ。
泥棒を捕らえたり、殺人事件の捜査をするのは 「 刑事警察 」、少年事案、売春、麻薬、銃器などの “ 特別法犯 ” は、「 生活安全警察 」 が扱う。
三つ目の 「 警備警察 」 には、テロやゲリラを未然に防止し、社会の安寧を維持する使命があり、それに必要な情報収集や、事件捜査を行っている。
警察組織において、「 公安部 」 は警備部門の代表的な存在であり、一般の警察官とは異なる厳しい訓練を受け、特殊な能力を身に付けた集団だ。
日本は、英米のように 「 強力な諜報機関 」 を持たないが、社会の安寧を目的とした情報機関の役割は、警察の警備部門と、防衛庁が担っている。
公安に選ばれる警察官は、本人の資質に加えて、親兄弟の思想背景まで徹底的に調べられ、“ よほど身元が確かな者 ” だけに限られている。
増田 寛也 総務相 は、「 ネット上の犯罪予告を検知できる ソフトウエア 」 の開発費を、来年度予算の概算要求に盛り込む方針を明らかにした。
開発が検討される ソフトウェア は、言語技術を応用し、違法・有害情報の検出精度を向上させるものだという。
これを用い、自殺予告や、殺人予告、「 言葉を使った議論の流れ 」 などを分析し、犯罪につながるような情報を、事前に察知する狙いがある。
発表は、おりしも “ 秋葉原の通り魔事件 ” を受けた 「 再発防止のための関係閣僚会議 」 が終了した後で、記者団に向けて行われた。
何もない時期に発表すると、マスコミ各社から 「 プライバシーの侵害 」 や、「 ( 国家権力による ) 表現の自由を奪う行為 」 と、批判されただろう。
専用の ソフトウェア が無い現在でも、前述の公安部をはじめとした警察の警備部門において、それに近い 「 検閲 」 は行われている。
ただし、検査の対象となる 「 サイト 」 や 「 掲示板 」 への書き込み件数は無尽蔵にあるため、現行のシステムで、すべてを監視することは不可能だ。
そのため、警備部門としては 「 喉から手が出るほど欲しい ソフトウェア 」 なのだが、導入に際しては、国民の理解や同意が必要となる。
この手の問題に関する国民世論は “ 流動的 ” で、たとえば、「 共謀罪 」 が不成立になった直後なら、反対を唱える人のほうが多かっただろう。
今回のように、社会を震撼させる凶悪な事件が発生した直後では、多少の抵抗があったとしても、過半数以上の同意を得られやすいはずだ。
検出ソフトの導入後、軽い冗談のつもりで “ 犯罪を匂わせる書き込み ” をした場合、公安などから 「 要注意人物 」 として監視される可能性がある。
人によっては、それを 「 窮屈 」 に感じるかもしれないが、監視されているかもしれないという意識が、ネット上でのマナー向上にもつながるだろう。
現在のネット事情は、その 「 匿名性 」 をよいことに、悪質な書き込みや、違法・有害情報が氾濫しており、それが犯罪に結びつく懸念を拭えない。
これからの時代、個人のプライバシー、表現の自由を少し犠牲にしてでも、ネットを 「 犯罪の温床 」 にしないため、監視システムは必要と感じる。
見た目は 「 ごく普通 」 な人間が、いきなり豹変し、惨事を引き起こす昨今、その予兆を嗅ぎ取る仕組みが求められるのも、うなづける話だろう。
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