Tonight 今夜の気分
去るものは追わず、来るものは少し選んで …

2008年07月12日(土) 北朝鮮と韓国の厄介な関係



「 敵を許すほうが、友達を許すより容易である 」

                 ウィリアム・ブレイク ( イギリスの詩人、画家 )

It is easier to forgive an enemy than to forgive a friend.

                                  William Blake



敵は 「 敵であること 」 を裏切らないが、友情は裏切られる場合がある。

そう考えると、「 敵を許すほうが容易 」 という理屈も、なんだか納得できる。


北朝鮮の景勝地 「 金剛山 」 の海水浴場で、韓国人の女性観光客が軍の立ち入り禁止区域に入り、北朝鮮の兵士に銃で撃たれ死亡した。

事件の報告を受けた韓国政府は、真相究明に向け、現地調査への協力を北朝鮮に求めたが、北朝鮮は 「 責任は韓国側にある 」 と、拒否している。

金剛山は、南北分断による 「 離散家族の再会事業 」 が行われている他、観光客を受け入れる唯一の場所として、窓口の役割を果たしてきた。

北朝鮮には、たとえば2泊3日の場合、一人当たり80ドルの “ 観光料 ” が支払われることになっており、金剛山観光には内外からの批判も多い。

事件後、韓国政府が金剛山観光事業の中断を決めたことを、北朝鮮側が激しく非難している理由も、この “ 観光料 ” が入らなくなるためである。


折しも、北京では6カ国協議が開かれていたが、この事件が協議の趨勢を左右することはなく、予定通り、議事は進行している模様である。

どちらに非があるかはともかく、自国民が相手国の兵士に射殺されるという事件が起きたのに、中断なく外交会議が行われているのは、妙な感じだ。

ときには “ 同胞 ” として庇い、ときには “ 敵国 ” として反撥する北朝鮮と韓国の関係は、世界でも他に類をみない複雑なものとして知られている。

日本にとっても、南北朝鮮の曖昧な関係が、拉致問題を交渉する場面での妨げになったり、経済制裁の効果を弱めたりする影響を受けている。

彼らは、お互いを 「 許せる敵 」 と考えているのか、「 許されざる友達 」 とみているのか、あるいは、また別の関係なのか、理解することは難しい。


1990年代、冷戦時代が終わりを告げ、東欧諸国が次々と崩壊する中で、どうして 「 ベルリンの壁 」 は崩れたのに、「 38度線 」 は残ったのか。

ヨーロッパから社会主義国が消え、なぜ北朝鮮だけ崩壊しなかったのか、その最大の理由は、「 韓国が “ 南北統一 ” を望まなかったから 」 だ。

東西ドイツが統一されたとき、統一ドイツは、旧東ドイツに毎年約10兆円の補助金を出し、不景気や失業で、旧西ドイツ国民の生活水準は下落した。

当時の韓国にとって10兆円は、国家予算の60%に相当する金額であり、この負担を知った韓国世論は、統一への熱気が一気に冷めたのである。

韓国の人口が約4500万人、北朝鮮の人口が約2200万人だから、統一すると、韓国人二人が、北朝鮮人を一人づつ養っていかねばならない。


つまり、韓国人にとって南北統一は理想だが、今すぐ統一すると、韓国人の生活水準は、少なくとも3分の2から、半分ぐらいまで落ちる。

もちろん、一部の韓国系財閥などは、北朝鮮へ出向いて資源を買い漁り、個別には大儲けするが、補助金の支出は莫大で、国家予算は枯渇する。

さらに、100万人を超える北朝鮮の軍隊が武装解除せず、ゲリラ化したり、核兵器を抱えて抵抗すれば、南北統一は、理想どころか 「 悪夢 」 だ。

だから韓国としては、少なくともGDPが現在の1.5倍程度に成長するまで、北朝鮮が崩壊しないように、食糧や肥料を支援せざるえないのである。

韓国と北朝鮮が 「 敵なのに友達 」 という不思議な関係を続けている背景には、このように特殊な事情があり、当面は、この関係が続く見込みだ。






↑ エンピツ投票ボタン です。 一度クリックする毎に筆者が踊ります。

My追加


 < PAST  INDEX  NEXT >


Oldsoldier TAKA [MAIL]

My追加