2008年07月21日(月) |
埼玉の父親刺殺 : 不幸だと嘆く心が家人を殺す |
「 人生の前半は親に台無しにされ、後半は子によって台無しにされる 」
クラレンス・ダロー ( アメリカの弁護士 )
The first half of our lives is ruined by our parents and the second half by our children.
Clarence Darrow
故 松下 幸之助 氏 は、社員の採用面接で、以下の質問をしたという。
それは、「 貴方は “ 運がよい ” ですか、“ 運が悪い ” ですか 」 である。
ここで “ 運がよい ” と答えた人は前向きに採用を検討し、“ 運が悪い ” と答えた人は、なるべく採用しない方向で人事が進められた。
幸之助 氏 は、「 およそ、人間の “ 運 ” なんてものは基本的に大差ない 」 という発想で、それを “ 本人がどう捉えるか ” が重要だと考えていた。
ありふれた境遇でも、“ 自分は運がよい ” と感じている人は、この世に生を授けた両親や、育ててくれた周囲に対して 「 感謝の心 」 を持っている。
逆に、“ 自分は運が悪い ” と嘆いているような人は、不平不満や贅沢ばかりに心が囚われ、自分が今まで 「 生かされてきたことへの感謝 」 が無い。
いくら成績が優秀でも、「 感謝の心 」 を持たないような人材では、客商売をする上で支障があり、組織人としても大成しないと、確信していたのである。
19日、埼玉県川口市に住む製薬会社員の男性が、中学3年の長女に刺殺されるという事件が発生し、各局の報道番組で大きく取り上げられていた。
当初は、『 勉強しろ 』 と言われて立腹したなどの動機だけを報じていたが、その後、長女が 『 父が家族を殺す夢をみた 』 と話したことがわかった。
既に被害者が死亡しているし、「 発作的な衝動に基づく短絡的な犯行 」 と判断されるだろうから、この事件は速やかに処理されるだろう。
つまり、「 何の問題もない父親を殺した 」 のか、「 殺さなければ殺されると感じるほどの恐怖 」 が現実にあったのかは、第三者に示されない。
けして、加害者の肩を持つわけではないが、「 普段は真面目な少女 」 だと伝える報道が真実なら、何らかの “ 理由 ” が、そこには存在したはずだ。
産業カウンセラーとして、悩みを抱える若者と話をする機会も多いのだが、最近は 「 自分は “ アダルト・チルドレン ” なんです 」 と語る人がいる。
子供の頃、父親から暴力を受けて育ったとか、母親の愛情が足りなかったことで、それらの体験が 「 トラウマ 」 になっているのだという。
それが 「 事実 」 なのか、「 本人の思い込み 」 なのかは、事情を知らない我々には判別できないので、相談されても黙って聴くしかない。
たとえ本人の思い込みだとしても、幼児期に不本意な育てられ方をしたことについては、たしかに本人の責任とはいえない面があるのだろう。
そして、それは 「 トラウマ 」 として根深く心の中に残り、他人との接し方や、状況判断などに、好ましくない影響を与えている可能性が考えられる。
しかし、自分を “ アダルト・チルドレン ” だと決め付け、そう言い続けたり、思い続けていることが、問題を長引かせている面もあるように思う。
たとえ不幸な境遇に育ったとしても、ある年齢以降については、すべてを 「 親のせい 」、「 環境のせい 」 にすることはできないはずだ。
また、私のように両親を尊敬している者でも、長い人生の中で反撥したり、意見の相違から衝突することが、少なくとも、一度や二度はある。
このところ、親が子供を殺したり、子供が親を殺す事件が多い背景には、嫌な出来事ばかりを心に留め、「 感謝する心 」 の薄い世情を感じる。
悪いことは 「 自分のせい 」 で、良いことは 「 他人のおかげ 」 だと考える習慣をつければ、不運を嘆くこともないし、自ら努力する姿勢が生まれる。
|