2008年08月11日(月) |
北島 “ 有言実行 ” の世界新、金メダル |
「 長い目でみれば、人間は自分が目指すことしか実現できない。
だから、目標は高めに設定したほうがよい 」
ヘンリー・デビッド・ソロー ( アメリカの作家、詩人、植物学者 )
In the long run, men hit only what they aim at. Therefore, they had better aim at something high.
Henry David Thoreau
実現できるかどうかはわからないけれど、志だけは高く持つほうがよい。
それを目指さなければ、実現もできないのだから。
北京オリンピック、競泳男子100メートル平泳ぎ決勝で、見事、北島 康介 が世界新記録の58秒91で 「 金メダル 」 に輝き、大会2連覇を遂げた。
前日に行われた準決勝では、前半のハイペースが災いし、後半で失速したせいか、予選よりもタイムを落とす結果になった。
決勝は、その反省を踏まえて、前半の50メートルを16ストローク ( 準決勝では19ストローク ) に抑え、後半に余力を残したことが勝因だという。
選手自身やコーチが語った勝因なので、もちろん事実だとは思うけれども、それだけのことで 「 世界新記録 」 を達成できたとは、誰も信じまい。
4年に一度の 「 瞬間 」 に、自分のベストを発揮できる精神力の強さ、不屈の闘志、人並みはずれた練習量が、すべて重なり栄冠は成し遂げられた。
前日、準決勝の後に行われたインタビューの途中、別組で ノルウェー の アレクサンドル・ダーレオーエン が好タイムで決勝に勝ち上がった。
その様子をモニターで眺めていた 北島 は、「 決勝は世界記録レベル 」 と呟き、それを “ 受けて立つぞ ” というポーズを示している。
古来より日本人の間では 「 不言実行 」 が美徳とされ、結果がどうなるのかわからないのに、自信満々と高い目標を掲げることは諌められてきた。
スポーツの世界でも、ビジネスの世界でも、不言実行の慎ましさが好まれ、目標は黙して語らず、結果が出てから感想を述べることが習慣化された。
稀に、堂々と高い目標を掲げる 「 有言実行 」 のタイプが現れると、それを疎んじ、「 結果が出る前に大口を叩くな 」 と嫌われたものである。
しかし最近では、「 よく考えてみると、“ 不言実行 ” よりも、“ 有言実行 ” のほうが、価値が高いのではないか 」 ということに、気付く人が増えた。
高い目標を宣言しない “ 不言実行 ” は、結果が悪かったり、失敗した場合でもリスクが少なく、人前で恥をかくこともない。
逆に、高い目標を宣言する “ 有言実行 ” は、好結果が出なかった場合、「 なんだよ、口だけかよ 」 と馬鹿にされる危険と隣り合わせである。
それを承知で “ 有言実行 ” する人は、単なるお調子者か、よほど自信があるか、あるいは 「 不退転の覚悟 」 があるかのいづれかだ。
無謀な挑戦でないかぎり、概ね、“ 不言実行 ” の人よりも、“ 有言実行 ” の人のほうが、「 結果に責任を持つ 」 という意志が強いといえる。
大部分の人が、最初に 「 自分のできそうなこと 」 を目標にし、実現すると、それから徐々に、次の目標のハードルを上げていくものだ。
そこまでは誰でも大差ないが、「 最終目標 」 を思い切り高く設定する人と、無難なところで妥協する人に分かれていくのが世の常である。
本気で目標を達成する意志があるのなら、その目標が高ければ高いほど、その実現に向けて、毎日、より多くの努力をしようとするだろう。
そういう意味で、金メダルを獲得する人、世界新記録を塗り替える人というのは、誰よりも 「 夢を諦めなかった人 」 だと言い換えることができる。
堂々と “ 有言実行 ” で目標を自分に課し、達成するまで諦めない強さを、北島 ら 「 世界のトップアスリート 」 から学ぶのに、五輪はよい機会だ。
|