○プラシーヴォ○
目次|←どうして?|それから?→
家から歩いて十分ほどのところにある産婦人科。
建物がキレイだし、なんとなくここしかないって思ってた。
前日に電話で予約を入れていたので 1人でサクサクと入っていった。
私の書いた問診表をチラリと見て、 お医者さんが
「じゃあ、今回は妊娠を継続できない・・・というわけですね」
ああ、 そういう表現もあるのか、と とても納得してしまった。
とても早口のお医者さん。 デスクの上の、使っている様子の無いimac。 診察室を出て行く時ドアを開けっぱなしにしたり、 お腹のエコーをとっている妊婦さんのすぐ横で 私に説明をする看護婦。
なんだか雑だなあ、という印象を持った。
手術は来週に決定した。 1日でも早く、とお願いしたのだ。
お腹の子が大きくなって、 手術の負担が増えるのが嫌だった。
私は、私のことしか考えていなかった。 お腹の子を「モノ」としか考えられなかった。
まるで妊娠してしまった彼女を遠くから見ている彼氏のように 動揺はしているけれど、 どうも実感が沸いていなかった。
最近、それがわかった。
私はつらすぎて、怖すぎて 心のシャッターを閉めきっていたのだ。
感じないように、考えないように、狂わないように。 脳から分泌されたモルヒネのような成分が 体中を駆け巡っていたのだろう。
|