○プラシーヴォ○
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今日は、 ラミナリアという海藻でできた棒状のものを 子宮にいれる処置をする。
出産経験のない女性は、子宮口が小さく固いので 堕胎処置がしにくく、傷つけるおそれがある。
だから、水分を吸収してじわじわ膨らむ棒(ラミナリア)をいれ、 子宮口を広げておくのだ。
細い棒で、必要に応じた数をいれる。
朝6時に起き、シャワーを浴びる。 ハム男に車で病院まで送ってもらう。 高速道路で30分ほど走り、到着。
黒くて長いスカートをまくり、 診察台に座ると、半回転して 下半身だけカーテンの向こうへと出る。
子宮にとてつもない圧迫感がきた。 お腹が痛くなりトイレに行きたくなった。
チクッとしたり、ズンッと押しこまれたり いったい私の子宮の中はどうなってしまっているのか?
「そうそう、うまいわよ。その呼吸をしといてね」
あまりの痛さに ハッハッと、妊婦さんが赤ちゃんを産む時の呼吸に なっていたらしい。
汗でぐしゃぐしゃの手で、私は椅子のひじ掛けを握り締めていた。
10分か20分か・・・ 処置が終わり、待合室の彼のところへ行く
通常診察が始まる1時間前に処置をされたので、 他には誰もいない。 いなくてよかった。
吐いてもいいように小さいバケツを持たされ、 診察室から汗まみれでヨロヨロと出てくるところを、 他の人に見られるなんて・・・想像しただけで恐ろしい。
彼と一緒に待合室のソファーで15分ほど黙って座っていた。
「コンビニに寄って、食べるものを買おう。 俺、すぐ会社にいかなくちゃ行けないから」 とハム男。
気持ち悪くて吐きそうだから、 先にとりあえず私を家の前でおろして、 それからあなた、どこかで食事すればいいじゃない。
ハム男は「わかった」と言って 私を彼の家の前で下ろした。
しばらくすると、コンビニの袋を下げて 帰ってきた。 寝ている私の横でお弁当を食べている。
心配そうな視線を私に送りながら 仕事に行った
それからずっとお腹の痛みが続いた
子宮が膨らんで大腸を圧迫しているのか 下痢の時のような痛みだった 事実、便が大量にでた
夜、彼が帰ってきて、慌てふためいて食事の準備をしていた。 「20時までに食事せなあかんもんな!」 魚をお味噌で煮た、よく分からないおかずを作ってくれた。 あんまり味がしなくて美味しくなかった。
夜、いつもテレビを見て夜更かしのハム男が、 私に合わせてベッドに早々に潜りこむ。
「大丈夫だよ。 痛くないよ。がちゃ子はなんにも心配しなくていいよ」
いつもの私なら フザケンナ!ナニガワカルッテイウノヨ!! と激怒するところだが なぜかこの日は、 根拠のないハム男の励ましが嬉しかった。
それぐらい、怖かった
嘘でも気休めでもいいから すがりたかった。
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