楓蔦黄屋
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2020年11月08日(日) 乙卯・山茶始開・星の子

「星の子」を読んだ。

事前にいろいろ情報を仕入れてしまったせいで
自分で読み解くということをせずに
ただただ淡々と読んだ。

でもよかった。

優しい世界だった。
ちひろちゃんを芦田愛菜ちゃんで読んだからなおさらかもしれないけど
ちひろちゃんがまず可愛かった。

ちひろちゃんが可愛くて、お姉ちゃんのまーちゃんも可愛いから、
両親が娘達を可愛いと思う気持ちに同調してしまって、
両親がひどいことをしているという気持ちにはあまりならなかった。

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「朝が来る」で、子どもがいること、育てられることの幸せを感じる。

でも「おらおらでひとりいぐも」で桃子さんが言った
「自分より大事な子供なんていない」も、ほんとうだと思う。

親子、ときいて想像するのは、小さい子と手をつないでいる親の姿だけど、
でも実際は、子どもが成人してからの時間のほうがずっと長い。
ならば、いっとき一緒にいるぐらいに思ったほうがいいのではないかと。
その言葉が、やさしい色合いをした白い石のように、心にコトンと置かれている。

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ちひろちゃんは食べることに貪欲で、
何年かに1回の法要のお弁当を楽しみに生きていけるような子で、
両親はもう、ちひろちゃんが何を食べても文句を言わないのなら、
ならばこの先もちひろちゃんは、けっこう強く、うまく生きていけるんじゃないかと思った。

ちひろちゃんがもし、おじさんのお家に行こうと思っても、
両親は反対しないだろうし、
もしそうなって、おじさんのお家で暮らしても、
ちひろちゃんの考え方は、そんなに変わらないんじゃないかと思った。

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むかし、宗教の勧誘にきたクラスメイトがいた。
そのときの、熱に浮かされたようなその子の目を今でも覚えている。

そして大人になってからも、
彼女のような目をした人に何人も出会った。
そしてその人たちはべつに、宗教にハマっていたわけではなかった。

熱に浮かされたような目をした人はいっぱいいる。

私もきっとそういう目をしていた瞬間が何度もある。
覚えがある。
これからもあるかもしれない。

上手に、しなやかに、かわしていきたい。
人のことも。自分のことも。



楓蔦きなり

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