楓蔦黄屋
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2021年04月23日(金) 辛丑・Baby,it's you

宇多田ヒカル「One Last Kiss」をアナログレコードで聴く最高さよ。

私のレコードプレイヤーはそりゃもう全然音がよくないんだけども、
「Beautiful World」のイントロのギターが歪みながら流れると
もうなんというか、なんとも言えずいいよねっていう。
オーディオマニアでない人間がレコードに求めるのはやっぱりこういうノイズでしょう。

加えて今の春の日差し、ほんの一滴セピア色を落とした鈍くて淡いプラチナ色の光が
午後になると遠くのビルとともに煙って見えて、
4月の終わりから5月になるまでのこのほんのわずかな季節の移ろいの景色が
宇多田さんの歌声とマッチしてまるでMVのようだ。

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今日はひさびさに川沿いを散歩をしました。
音楽を聴きながら。

青い空にはお椀を伏せたような白い月がかかっていて、
その下を雲が強い風で速く流れているのを見上げていたら
YUKIちゃんの「Baby,it's you」がかかって、これもまた美しいMVでした。

視界に空しかない時間を過ごすのは久々でした。

手嶌葵バーションの「Beauty and the Beast」は
河の水面がさざめきたつ様と、流れていく様と、
シロツメクサの群生が風にゆれる様にとてもよく調和していたよ。

昔から空が好きで、今も空が好きで、
空が好きとかいかにも漫画チックだなと長年思いながらもやっぱり
私は空を見るのが好きだなと思いました。
やっぱり晴れてる空が好きだね。

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自分の、長年変えたいと思っていたところを
変えようとしてうまくいかないのをもう何年も繰り返しているけども、
ここへきて少しずつ少しずつ結果として表れている。

変えたいなと思ってからもう4年か。
もう4年というか、まだたった4年なのか。ちょっと意外。

4年で結果が出はじめてるならむしろたいしたもんだと思う。

すぐにはそんなに変われないし、変わったと思ってもたいてい気のせいだったりとかする。

お世話になってるダイエット動画で、
「ダイエットの目標というのは体重や体脂肪といった数値ではなく、
 それによって自分と他人にもたらされる、有形無形の嬉しいことを想像することだ」
と言っていて、ほほおなるほどなと最近思った。

そしてそれはダイエットだけでなくわりと色んなことに言えることだなと思った。

変えることによって自分や他人にもたらされる有形無形の利益。
他人にどう思ってもらうかなんてまったく考えたことがなかった。
というより考えないようにしていた。
どう許してもらうか、ばかり考えていたからかもしれない。
どう嬉しく思ってもらうか、を考えるほうがいいかもしれない。と最近思った。

さて、4年もかけたんだからそろそろ結果の芽ではなく結果の実をひとつぐらい収穫したいもんだ。

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いろんな失敗をしてここまで生きてきたけども、
いろんな失敗をしたわりには相変わらず生きていて面白いなと日々思う。
年をとるのは面白いなと思ったりする。そしらぬ顔して思惑通りにいかせたりできるからだ。

人は長く生きてだんだんと自分になっていく。

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子どもを産まないという選択をした人たちのことを考える。
彼ら彼女らは「子どもを持たないと後悔するよ!」という子持ちの発言が心底嫌いなのだという。もっともだ。

「後悔するよ!」と言う人たちは、
子どもを産むということは実は自分たちに与えられた才能なのだということをおそらく自覚していないのだろう。
誰でも産めると思っているからだ。

実は産めて当たり前ではない。産みたいと思うのも、産める身体があるのも才能なのだ。

私はおそらく現代医学がなければ出産で子どももろとも命を落としていた。
そういう出産だった。
どちらかというと、子どもを産む才能に乏しい身体なのだと思う。

入院していた産院でも、「あたし現代医学がなかったら死んでたわー!」と
あっけらかんと言うお母さんがいて、「私も私も!」とものすごく同意したものだ。

出産は死ぬ可能性が高い。
「命がけで産む」というのはつらくても必死に産むというより、失敗すれば普通に死ぬという意味だ。

妊娠は病気ではないが、死ぬ可能性は通常よりも高い。
帝王切開は、ラクだからするのではなくて、しなければ死ぬからするのだ。
そしてどんなに苦しくても経膣分娩できる限り帝王切開をしないのは、そのほうが死ぬ可能性は低いからだ。

ダンナは私の出産を待つ間、死を覚悟したという。

だから子どもを産まないと決心する人たちは、本能が働いているんじゃないかと私は思う。
才能がない、というと蔑んでいるようにも聞こえるが、
別に欲しい才能じゃないんだからなくてもかまわないよ、という感じだろう。
私だって別に、たとえば音楽の才能がないとか演技の才能がないとか言われても
別にふーん、という感じだ。だろうね、要らないし、みたいな。それとたぶん一緒だ。

だから子どもを産まないと後悔するよ!という子持ちの人は、
ステージにあがって歌わないと後悔するよ!という才能ある歌手みたいなものなのだ、きっと。

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じつはもう早く寝たい。









楓蔦きなり

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