2002年05月29日(水) |
勇気凛々ルリの色 浅田次郎 |
講談社文庫 1999
94年から95年にかけて「週刊現代」に連載されていた浅田次郎のエッセイ(?)を集めた文庫本。
さて、94年から95年というのは、今、考えても非常に激動の期間だったような気もする。私自身は、大学を卒業し就職したのが94年だ。そして、95年は、あの阪神大震災、そしてその後にオウムの地下鉄サリン事件などが立て続けに起き、日本の安全神話は崩れ、日本の国の危機管理の甘さのようなものが浮き彫りになった年だった。考えてみれば、このサリン事件などを境に、その後、青少年の無差別な殺人などの犯罪が増えていったような気もする。
実は浅田次郎と言えば、この間の朝日新聞連載小説や「鉄道員」などのイメージでしかなかった。私とするとかなり気のいいおっちゃんが書いているのではと、勝手な想像をしていた。写真を見る限りでは、まさに気のいいおっちゃんっぽいのだけど、このエッセイを読んで驚いてしまった。というのは、浅田次郎の経歴が、とにかくすごいものであったからだ。最初、その経歴が作風とは結びつかったのだけど、よく考えてみれば、確かにこの間の「椿山課長の七日間」の中にもヤクザの親分なんかも出てきたんだったな。
経歴をあっさり書けば、小さい頃家が没落し、大学入試に失敗し(?)自衛隊に入隊。その後、ねずみ講や借金取りみたいな荒い仕事などをかなりやり、そして、小さい頃からの夢であった小説家になったらしい。あと競馬も生業としているようだ。
自衛隊っていうのは、かなり遠い存在だけど、元自衛隊の人がその中の様子を書くのは本当に面白い。でも、一番このエッセイがすごいと思ったのは、やっぱり「非常ということ」という中にもあるのだけど、元自衛隊の視点から見た、日本の危機管理の甘さみたいなのを指摘してあったことだ。結局自衛隊に入っていたということだから、中のことにも詳しいのだろう。
とはいえ、決してそれが堅苦しい文章で語られているわけではなく、思わず笑ってしまう話ばかり。あとからなら笑い話だけど、実際のそのときは笑い話どころではなかったとは思うようなそういう話が多い。だから、私のようにあまり普段そういうことを考えない者でも楽しく読めたし、なるほどなーと思うことも多かった。かなりお勧めのエッセイだ。
|