2002年05月31日(金) |
地下鉄(メトロ)に乗って 浅田次郎 |
徳間文庫 1997
STORY: 大企業の社長を父に持つ真次。優等生の兄は高校生の頃自殺。父に反発し、家を飛び出す。母もそのあとを追って家を飛び出す。弟だけが父親についていく。そして、父には他にも女がいて・・・という複雑な家庭。ある年の兄の命日、真次は突然過去の世界にタイムスリップする。現代に戻った真次はその話を周りにする。そのうちの一人、真次の愛人みち子は、その後、なぜか真次と共にタイムスリップをしてしまう。2人は何度も現代と過去を行ったり来たりしながら、父親のことや兄の自殺の真相などに気づいていく。
感想: 最近浅田次郎づいている私。エッセイ「勇気凛々ルリの色」も面白かったので、その続編も予約してきてしまった。
この話、とても複雑な話だ。だけど、ぐいぐい引き込まれていく。特に最後の方はそうだ。大体タイムスリップするなんていうのも、普通の世界ではまず起こらないことだし、エッセイと小説とではギャップもあるんだよなーとやっぱり思う。私が読んだ浅田次郎の小説はどれもこれも不思議なことが話に絡んでいたりするので、余計エッセイと結びつかなかったりしたわけだ。でも、そのエッセイの中で自殺をされるということについて書いていたなあとか、やっぱり小説の元になる思想みたいなのは同じ人だなと感じたりする。
この本を読んで驚いたのは、戦前から地下鉄が通っていたということだ。何となく地下鉄なんて戦後にできたものだろうと思っていたが、昔からあったということに驚いてしまった。また戦中や戦後の描写などもすごくリアルである。
話の内容は面白いが、複雑な人間関係にちょっと戸惑うかもしれない。そして、最後に出す結論というものも特にないというか、なんだ、このままか・・・といった感じは否めないのだが、主人公の性格からしてそうなるかなと、納得できる。
死者の最後を変えようと主人公は試みるわけだけど、やはりそれは成功しない。しかし、一つだけ事実が変わってしまうこともある。兄が死ぬということは必然だったということなのか、それとも主人公がやり方を変えれば、戻ってきた人生で兄が生きていたということなのか・・・。
それにしても複雑な家族だった。でも、どの家にも結構複雑な部分もあるのかもしれない・・・とちょっと思ってみたりもする。
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