感想メモ

2002年06月04日(火) 愛を乞う人  下田治美

角川文庫 1993

STORY:
照恵は夫に先立たれ、高校生の娘と2人暮らし。30年ほど前に亡くなった台湾人の父の遺骨を探そうとするが、娘に語った照恵の過去は壮絶なものだった。孤児院から引き取られたあとは、実の母から暴力をふるわれ、ののしられる日々。ようやくその日々から逃れられたのは就職したあとのことだった・・・。

感想:
 この作品は映画化されていて、映画も見たいと思ってはいたのだが、かなり壮絶な虐待シーンがあるようだったのもあり、怖くてなかなか思い切れないうちに、映画を見る機会は訪れなかった。(今後見るかも知れないが) 図書館でこの作品を見つけ、小説なら大丈夫だろうと借りてきた。

 しかし、壮絶な話だった。結局最後の終わり方がちょっと釈然としないし、どういう意味を持っていたのか、結論が出そうにない。映画を見た人に聞いたら、映画では母親と再会し、身分は明かさないまでも2人で少し話すのだとか・・・。

 結局結論は出ないのだが、私としてはこの母親には愛のかけらもなかったような感じがした。もしかしたら愛の裏返しとして・・・とも思ったのだが、何となく読んでいる限りではそういうことでもなく、ただ単に本当に精神がおかしくて、人に暴力をふるうことで鬱憤を晴らしていただけではと思った。それがたまたま身近にいた実の娘に対してだったのだと。暴力をふるわれる理由があるのではと主人公は思うが、結局理由はなさそうな感じだった。いや、もしかしたら深いところに理由はあったのかもしれないが、それは主人公にも私にもわからなかったように思う。

 優しい人が赤の他人であり、冷酷な人が血のつながった者であるというのが、台湾で親族と出会うエピソードなどにも見られ、本当に血とは何だろうと思わされた。愛乞食という言葉がものすごく切なかった。いろいろ考えさせられる作品だった。


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