| 2002年09月30日(月) |
高樹のぶ子『光抱く友よ』 |
それまで読んだことのない作家の本を手にする時、新しい世界にのりこむような期待で、胸がわくわくします。
それまでの常識を覆してくれるようなおもしろい世界を見せてくれるんじゃないか、思いがけない表現であっと言わせてくれるんじゃないか、わくわくです。
高樹のぶ子さんに初挑戦。 女性作家は場面の説明にこって、出来事の描写に終始してしまうことが多いように思います。 これは人の好みですが、私は、あんまりそういうのは好きじゃなくって、もっと内面をぐっと掘り下げて、かつ簡潔な言葉で言いきって欲しかったりするので、高樹のぶ子さんの文体はうならされました。
邪魔な装飾をはぶいて、質素で硬質なんだけど、鋭く本質をついています。 「高校の現代文の問題になりそうだな」なんて思いました。
「僕はまだ、男女のことを殆ど知らないわけだが――」と言い淀んでいたが、 「経験を共有するなんて変な言い方になるけれど、たとえば相手の経験が自分 のものと同じほど大事になる、それくらい近づきあうことは可能だね。 知識だって共有できないはずはないんだ――」 と言葉の端々に力をこめて言った。 「知識と言ってもだよ、読んだ本や専門的な学問のことじゃなくて、頭の中に蓄 えられていていつでも自在に出てくるもの、考え方の共鳴といったようなこ とかな。 その相手がいなくては、自分の考え方を確かめる方法がない、という繋がり方 をした男女もこの世の中にいるはずだよ」とつけ加える。
うんうん。そんな風に感じられるような人はかけがえのない存在だね。
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