美ということに、とことんこだわった三島文学の真骨頂とも言うべき作品です。 主人公、周伍は、「女は美しくなければ一文の値打ちもない」と信じている。
いやあ、興味深いじゃございませんこと? 私は、その洞察力と審美眼から、三島由紀夫に認められるような女になりたいと常々思ってますことよ。 この作品にも、女としてのあり方を多く学ばせていただきましたわ。
朝子はふと黙った。 周伍は敏感であった。自分が長広舌をふるっているあいだ、素直な娘は、一見興味深そうにきいていた。彼が教えたとおりの「社交界のどこへ出しても恥ずかしくない表情」である。しかしどこかに放心したような翳がある。 『この子は私のいうことをきいていないな』 と彼は思った。思ったが、しゃべりつづけた。娘が、そういう表情のかげに除分の別な勘定をかくすこともできる技術を、すっかり習得しているのが誇らしくもあり、微笑ましくもあったからである。
あ〜る〜ね〜。 さも聴いているような顔をして、相槌を打ちながら、まったく上の空のこと。そっかあ。これも、うまいことやれば、社交技術なわけなのねん。
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