椅子の上で背中を反ると、タペストリーの海豚が縦に三匹見えた。
その後ろに太陽の印、内側に黄色で外側に赤色の虹が見えた。
さらに背中を反ろうと、体に掛かっている安全装置を外す。
体はカチカチと装置を外され弛緩していく。
体はダランとなり、ズルッと大きい音と立てたように曲がっていく。
頭への酸素の供給が過剰になったのか、不足になったのか、世界が、ぼやけて来る。
「このまま・・・」
「このまま、背中をもっと反れればいいのに」
「このまま背中をそれば、脊髄が折れて、胃を破り胸骨を突き抜ける。」
「突き抜けた脊髄は頭脳の重さで天井に垂直になるだろう。まるで棒倒しの棒のように。」
「さらに体は弛緩して、手は床の青白い絨毯に投げ出されてダラリとのたれ、
頭はタペストリーより下の風景に霞みを翔けるだろう。」
「脊髄から流れ出す鮮血が顔に掛かり赤々と目を覆う。
黄色で透明がかった脊髄が、最後にやってくる。」
「私はやっと、あの太陽の中に帰っていける。」
読み;「脊髄(せきずい)」、「海豚(いるか)」、「弛緩(しかん)」、「絨毯(じゅうたん)」、「霞(かす)み」、「翔(か)ける」、「鮮血(せんけつ)」
執筆者:藤崎 道雪