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「 灼熱の汗 」
2004年07月04日(日)



 無限に近い徒労。
 膨大すぎるほどの無駄と、拡大し続ける無我。
 種の存続のための個体死、けれど種の存続理由が与えられないからだ。
 いや、種の存続理由を知り得ないからこそ無限に近い徒労が繰り返す。

 灼熱の炎天下、タオルで顔の汗を拭(ぬぐ)うようなものだ。
 拭ってもいいし拭わなくてもいい、直ぐに乾いてしまうのだから。何時まで続くか、何時までも続き、何時でも拭(ふ)けば一瞬で一時的に消え去るのだから。
 面倒くさければ体の感覚に任せっぱなしても良いし、自我に従って拭いても良い。
 物理的な心身が脅かされるわけでもないし、3ヶ月もすれば忘れられる行為だ。

 私たちの個体も種に比べれば、種の存在理由から眺めれば、灼熱の炎天下にタオルで汗を拭うようなものだ。
 嗚呼、あたいの肉体が老いていくよ。
 嗚呼、僕の心が病んでいくよ。
 嗚呼、私の全てがいつの間にか蒸発していくよ。
 嗚呼、原子の集まりがまた原子の集まりに置き換えられるだけなんだよ。
 人間全てが、人間の歴史が、人間の未来全てが全てが。
 真夏の湿度の中へと。

 愛憎?ああ。
 名誉? 金銭? 地位? 肌の色? 学歴? 知識? 智恵? 平和?? 戦争とは? 社会主義 民主制? 
 ああ、全てが必要だね。
 ああそうさ、音楽を混ぜても良い。芸術も文学も思想も自然科学も歴史だって何だってござれだ。製品だって技術みたいな即物的なものだって、進歩や怠惰、高尚という概念でも形而上学全体だって何だって良いんだ。
 あぜ道の上でかく汗の中にいるんだから必要なんだろうさ。膨大すぎるほどの無駄と、拡大し続ける無我としてね。
 無限に近い徒労。
 
 汗。ああ。
 汗 嗚呼

執筆者:藤崎 道雪

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