Dance日記帳
モクジ|キノウ|ヨクジツ
日舞の稽古へ。
師匠の舞台以来の稽古。 先週の感動を未だ鮮明に覚えている。
一通りの稽古が終わり、他のお弟子さんたちと一緒に談笑。 師匠がどのような心境で舞台に立っていたか、舞台の裏でどのような事があったのかなど、いろいろなお話を伺う。 ジャズの舞台と共通する話や、作品についての話などにも及び、普段の稽古とは違った意味で学ぶことが多かった。
勢いで、今まで分からずにいて、しかし、恥ずかしくてなかなか聞けなかった質問などもしてしまう。 「清元」「長唄」「常磐津」の違いを説明してもらい、1年にも渡る疑問が解消されたのが何とも嬉しい。
更には勢いに乗りまくり、此れまた酷く恥知らずなことを言ってしまう。 先週の「感動しました」など陳腐な台詞じゃなくて、もっときちんと自分が感じたことを師匠に伝えようと。 しかし、舌先から滑り落ちた言葉は「カッコイイ」という、更なる稚拙なものだった。恥の上塗り。嗚呼。自分の語彙の少なさに絶望さえ感じる。 言ってしまってから戸惑うばかり。いっそ言わなければ良かったと。 こうなってしまえば破れかぶれ。ヤケクソだ。 緞帳があがったとき、師匠が踊り始めた瞬間に首筋に鳥肌がたったこと、どれほど客席で「私、この先生に教わっているんです!」と自慢したく思えたかということ、一挙一動を瞬きもせず見つめ過ぎて、あまりに瞳が乾燥して泪がこぼれそうになったこと、そして、日本舞踊が今まで以上に好きになったこと。 まるで恋の告白をするかのように、心拍数を上げ乍ら洗いざらい申し上げた。事実、師匠の艶姿は私の目蓋の裏にしっかりと焼き付いている。
師匠は「これは今度ご飯でもご馳走しなきゃならないわね」などと茶化しておられたが、一瞬真顔で「楽屋に来た時の、貴女の顔は忘れないわ。そりゃもう、今まで見たことないようなほど嬉しそうな顔して立っていたからね。」と。 言葉にうまくできなかったとしても、私が如何に感動していたかは知らぬうちに表情に出ていたのだろう。
憧れの人がいるということは、それだけで人生を特別なものにしてくれる。 其のような人と出会えたことが、何より貴いと思うのだ。
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