| カンラン 覧|←過|未→ | 
 
 
 いつも,そう。 私の頭は, 私のからだは, 予告なんてしてくれない。 今朝は踏み切りへと繋がる小道を歩いていて, 蝉がたくさんとまっている木々のそばを通りかかったとき, その羽を懸命にこすり合わせて生み出す みんみんという音に 頭を左右から, ちょうどこめかみあたりをざくざくと刺されるような痛みを感じて, そのけたたましい音以外は聞こえなくなった。 煩いぐらいに頭の中にはつぎつぎとみんみんが 降り注いで溢れ返っているというのに, 何も聴こえない状態。 みんみんにすべての機能を支配されてしまったような感覚。 くらくらした。 こんなとき, よりにもよって, 「いのちってすばらしい。」っていうことばが ぽわっと浮かんでくることがある。 よりにもよって。 小さな頃に見た教育番組だか,CMだかのキャッチ・フレーズのような気がする。 くらくら中,もしくはくらくら回避直後の私は, ぼそっと「くそくらえ。」とつぶやく。 こころの中で。 生きている証は, 時々, あまりにも毒々しく強烈でどぎつく, 目の当たりにした者を飽食の末の消化不良に似た症状に陥らせる。 物事のひとつひとつの出会いは, 互いの波長がその瞬間, どんな状態にあるかで左右される。 今朝の私とみんみんの波長はあまりにも食い違ってたんだろう。 あー。 暑さのせいで心までもが溶け出し,飴のようにかたちをなくしてる。 
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