カンラン
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終末のお風呂は、遊ばれ疲れた色とりどりのおもちゃから滴る水の音が大きく響く静かなひととき。
いつもは私にぴったりくっついて離れないぴのきがつちのこ氏と一緒に入浴し、そのあとひとり入るお風呂。 授業をさぼったときとおんなじような気分でいる。きっと。 晴れ晴れとしていて、それでいて少しうしろめたい。つまりは、甘い気持ちだよ。
昔、母が頭もからだも顔もざばざばと浴槽のお湯で洗っているのがなんとなくいやだった。シャワーがあるんだから、きれいなお湯で洗えばいいのにと思っていた。 そんなだった私が今はあの頃の母とおんなじことをしているよ。おかしくてひっそりと笑う。
もったいないだけじゃなくて、追い炊きができないから、うちのお風呂。熱いお湯を足すにしても水量が減らないとどうしようもないから。 などとぶつぶつ理由立てしてるのもまたおかしなことだ。
いまやつちのこ氏でさえも使ってるらしいよ、浴槽のお湯。(つちのこ氏談) それもさらにおかしい。
そこから妄想が広がりをみせる。
ぴのきが中学生ぐらいになったら、なんとなくそのあとのお湯を使うのはいやかもなあ。あのうすらうぶひげが生えたぐらいの男子。紅茶のティーバッグばりになんか濃ゆいエキス(なのか?)が染み出ていそうで、つらい。世に言う「お父さん、きもい」より、うんと。(注:あくまで妄想)
私には弟がいるんだけれど、ちょうどその時期はおたがい寮生活をしていたため一緒に暮らしてはいなかった。ので、実際の濃さは計り知れない。
でも現在2歳(もうすぐ3歳)のぴのきがいきなり見慣れない中学生男子に豹変するわけではないのだ。一日一日、そばで丁寧に時をすごして大きくなり、そういう時期を迎える。
で、ちょいと髪を長くしたりして色気づいたぴのきに「浴槽のお湯で洗うなんて信じられない」などと反対にきたないもの扱いをされたりするのだ。
ああ、ぴのきや。 自分がいまどれだけ母にべったりなのか未来のあんたに知らしめてやりたい。
そんなことを真剣に妄想しているので、お風呂からあがったころには2歳のぴのきがつちのこ氏の腕枕ですでに眠りについていたりするのです。 ふやけた。
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