カンラン
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手仕事する人を眺めるのが好きだ。 そのそばで自分も作業できれば、この上ないしあわせ。
結婚前のつちのこ氏はたしか革小物を作ったりもしていた。私の愛用するカード入れやブックカバー、ティッシュケースは彼の手作りだ。 それが、気づけば自由な時間はすべてゲームの人となり、大画面の中で旅をし続けている。
時々、映像がどれほど美しいかや音声がどれだけリアルかなどについて感想(というか、同意)を求められるが、私の返事はいつも決まって「ふーん(もしくは、うーん)」だ。 興味がないのだから仕方ない。 趣味の不一致なのだ。
そんな具合なので、ぴのきが寝静まったあと、一緒にお茶を飲んだら、ふたりはいつも別々のことをしている。イヤホン装着で。つちのこ氏のヘッドホン(ワイヤレスのすごいやつ)にはゲーム音声が流れ、私のイヤホン(つちのこ氏のおさがり)には音楽が流れる。
たまにふたりともDVD鑑賞のときもあるけど、ふたりはいつも別々のものを観る。さらにたまに「これいいよ。観てみたら?」などという展開もあるのだけれど、互いにたいてい観ることはない。 趣味の不一致なのだ。
こんな夫婦はめずらしいかも。 決して不仲なわけではありませんが。
一度、「前は革小物作ったりしてたよね?」と訊いたこともあるのだが、「それはBROOCHさんの気をひくため」ということばが返ってきた。きっぱり。 そうか、そうなんだ。 さみしい。 詐欺とまでは言わないが、実際に一緒に暮らしてみないとわからないことってあるのだなあ、とひとり茶をすする。
昔は映画も結構一緒に行ったんだがなあ。おそらく毎回どちらかが趣味ではない「つきそい鑑賞」をしてたんだなあ。
ぱっと思い出せるところで、結婚後に一緒に観たのは「箪笥」、「姑獲鳥の夏」と「県庁の星」。 「箪笥」は家でごろごろしながら観てたこともあって私が途中で眠り、「姑獲鳥〜」は互いに「んー」という感想を漏らし、「県庁〜」は臨月の腹でかり出されたレイトショウ。(おそらくつちのこ氏は当時柴咲コウにはまっていたのではないかと推察) ・・・これから先、この人と一緒に何かを観ることってあるんだろうか? 重ね重ねになるけど、別に不仲なわけではなく。
そんななか、今宵はつちのこ氏がぴのきのためにプラモデルを作ってやるという大プロジェクトに着手。こまごまとしたパーツに色を塗るつちのこ氏の傍らで、ちらちらと真剣なまなざしの我が夫を盗み見しつつ、けしごむを彫った。ヘッドホンもイヤホンもなくいろいろと言葉を交わしながら。 しあわせだー。
「今日はここまで」というつちのこ氏のひとことで、そっからまたいつものスタイルに戻りはしたけど、なかなかに有意義なひとときであった。 こういうのがしたかったのだな、私。 ・・・よくよく考えてみると、やっぱり互いに違うことをしてるのには違いないのだけど。
自分の生まれ育った家の光景と比べると、どうにも同居といった風情漂うわが家。(家族っぽくない) 今後どうなるのか。 いや、おそらく変わりはしない。
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