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.◆◆第4話:『愛しのハピィデイズ』 ��
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「・・・今、なんて言った?」亨がつぶやく。その目は恐いくらい真剣だった。 いわなきゃよかった・・・あたしはそう思った。 事の起こりはこうだった。 試験前、亨があたしの授業のノートを借りに来て、コピーを取るために近所のコンビニへ二人で向かう途中、渡したノートをパラパラとめくりながら亨がつぶやいた。 「みわこー、おまえのノートって見づらいなぁ。瞳子のはもっとわかりやすい ぞー。」またか。あたしはむっとしながらそれでも何も言わずに歩いていた。 何かというと亨という奴はあたしと瞳子ちゃんを比較するのだ。そして、たいがいけなされるのはあたしの方。 悔しいけど何も言い返せない。言われていることは事実だし、もっと悔しいことにあたしはそれでもこいつのことを好きなのだから。だけど、亨の心の中には瞳子ちゃんがいて、そこから瞳子ちゃんを追い出してあたしが入り込む余地も自信もあたしにはなかった。頭が良くて美人で、しかもすごく性格の良い人だ、瞳子ちゃんという人は。そんな瞳子ちゃんに勝てるものなんてあたしにはない。 情けないけれど、あたしは瞳子ちゃんに相当コンプレックスを感じているのだ。
「瞳子ってすげえよなー。テストも毎回毎回学年ベスト5だしさぁ」いつもならあっさりと流してしまえるのだが、今日のあたしはいつもと違っていた。 「いいかげんにしてよ!そんなに瞳子ちゃんがいいならノートだって瞳子ちゃんに借りればいいじゃないの! そんなにほめるんなら直接瞳子ちゃんに言えばいいじゃない! あたしの気持ちなんかお構いなしよね、あんたって。あたしが傷つかないとでも思ってるの?こんなふうに言われて。あたしには何を言っても許されるとでも思ってるわけ? 瞳子ちゃんのことが好きなら瞳子ちゃんに直接言いなさいよ!陰でこそこそしてないで。 でもどうせふられるだろうけどね。瞳子ちゃんには好きな人がいるんだから!」 そこまで一気に言ったとき、あたしははっとした。・・・亨の顔からそれまでの笑顔が一瞬で消えたから。 「今言ったこと、本当なのか?瞳子に好きな奴がいるって」詰め寄られてあたしはうなずくしかなかった。 「誰だよ?俺の知ってるやつか!?」 「知らないわよ。瞳子ちゃんも教えてくれないし」 「何で聞かないんだよ、友達だろ」 「友達だからって何でも知ってるとは限らないし、言いたくない事だってある でしょ?じゃあ聞くけど、あんたあたしの友達だって言うけどあたしの好きな人 知ってる?」 「そんなん、知らねーよ」・・・そりゃそうだろうな・・・期待はしてなかったけど。 「でも俺じゃないことは確かだよな?」 「----------!!!」 「とにかく俺、瞳子に聞いてみるよ」 やめなさいよ、瞳子ちゃんに嫌われたいの?そういいかけた言葉をのみこむ。 嫌ワレテシマエバイイ。悪魔のささやきに似た声がこころの中をよぎる。 亨の中で、あたしはただの友達・幼なじみでしかないんだ。瞳子ちゃん以上の存在にはなれないんだ。ずっと前からわかっていたことだけど、改めて思い知らされたようでなんだか悲しかった。 「ねぇ美和子、放課後ひま?」 ある朝、あたしが登校してくるなり絵里ちゃんがあたしを廊下に引っ張り出してこそり、と聞いた。 「ひまだけど・・・何するの?」あたしが聞き返すと絵里ちゃんは意味ありげに笑う。 「ふふっ、お・と・こ。うちのメンバーの弟で、G組のひとなんだけどさ、この前のライブの打ち上げに美和子も来てたでしょ?あの時から気になってたんだって 美和子のこと。だから紹介してくれってうるさくてさ。」 でもあたしは・・・そういいかけたのを絵里ちゃんがさえぎる。 「まだ永井のことが気になるんでしょ?なんだかんだ言っても」絵里ちゃんにはすべてお見通しらしい。あたしは素直にうなずいた。 「あのね、こういっちゃなんだけど、彼は優しくていいひとだし、永井みたいに 鈍感なやつより美和子にお似合いだと思う。今の永井にはとーこさんしか見えてないみたいだし。一度会ってみてよ。それから決めても遅くないし、いきなり彼氏・彼女って訳でもないんだから」 「ねえ、その人本当にあたしのことがいいって?一緒にいた麻衣か瞳子ちゃんの間違いじゃないの」あたしがそういうと絵里ちゃんは眉間にしわ寄せてひとこと。 「あんた本気でそれ言ってるの?そんなに自分に自信がないの?」うなずいたあたしに絵里ちゃんは頭を抱えた。 「知らないの?あんた自分がどれだけ人目引くか」あたしが首を横に振ると、 そっか、身近にとーこさんがいるからねぇ。ぽそりと絵里はつぶやいた。 「でもね、あんた割と人気あるんだよ。ちっちゃくてかわいい、チャーミングだ、守ってあげたいって。紹介しろと言われたのも今回が初めてじゃない。 ただ、いつもあんたは永井と一緒にいたから、他の連中は笹原美和子と永井亨はつきあってる、って勘違いして誰も手を出さないだけの話。 とーこさんみたいに完璧のひとが近くにいるからそれに気づかなかっただけよ、 美和子の場合。」 あたしは一瞬考えた。 亨のことを忘れられるかもしれない。亨以上にその人のことを好きになれるかもしれない。 ずるい、逃げの考え方かもしれないけれど今のあたしにはそういう思いしか浮かばなかった。 「わかった。・・・会ってみる、その人に」
「・・・・朝っぱらからおもしろい話してるわねぇ。あたしにも紹介してよ、絵里」振り向くと、梢ちゃんが立っている。 「あたしにも紹介してよ、ねえ」 「梢・・・」 梢ちゃんは、最近1年つきあっていた彼、富田君と別れた。 ただ別れただけじゃなくて、富田君と楓ちゃんがずっと両想いで二人をくっつけるために梢ちゃんが身を引いた、という結末だった。 だけど、梢ちゃんは楓ちゃんに対して態度を変えずにあたし達が見る限りはいつもの梢ちゃんだった。 本人たち以外で、ただひとり事情を知っていた瞳子ちゃんが「ばかよ、梢は・・・」と言って陰で泣いていた。 瞳子ちゃんは梢ちゃんの一件があってからふさぎこむようになっていた。何だか元気がなく何かに悩んでいる感じなのだ。 (『愛しのハピィデイズ』��に続く。)
2002年05月08日(水)◆◆
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