|
.◆◆第4話:『愛しのハピィデイズ』 ��
|
「美和子!」あたしが公園に駆けつけると、亨が青ざめた顔で手をふった。 「一歩遅かった!あいつ、どこかへいっちまったよ。あんな状態で・・・どうなるか不安だよ・・・」 今まで見た事のない亨の顔。瞳子ちゃんに一対何があったの・・・?胸の中にじわじわと沸いてくる不安を感じながら、うろたえる亨を叱りとばすようにしゃべる。 「そんなこと言ってる場合じゃない!早く追いかけるわよ!!・・・それから、話してもらうからね、瞳子ちゃんに何があったのか」 とにかく今は瞳子ちゃんを探すほうが先だ。あたしたちは街のほうに向かって歩き出した。
「おまえ知ってるか?瞳子の好きな奴」瞳子ちゃんを捜し歩きながら、亨が不意につぶやく。 「実際はどうかわかんないけど・・・ひょっとしたら、本並先生じゃない?」 「お前もそう思うか・・・。俺、今日の今日まで気づかなかったよ。」 「それがどう関係あるのよ、瞳子ちゃんに」 「本並の本命は誰だよ?瞳子じゃないだろ?」 「そりゃ、瑶子さんに決まってる・・・・あ!」 「わかったか?本並が瞳子ん家に来て言ったらしいぜ、瑶子さんをくださいって」 瞳子がおかしくなったのは、そのせいだと思う。亨はつぶやいてため息をひとつ吐いた。 「まいったなぁ・・・本並じゃかなうはずねぇよな、俺は」亨にしては珍しい、弱気な発言。
「何いってんのあんたらしくもない。どうせふられるんなら当たって砕けてみなさいよ、堂々と気持ち伝えてさ。・・・だけど今はだめ、瞳子ちゃんがあんな状態なら、聞き入れる余裕は絶対にないはずだから」・・・あたしは何を言ってるのだろう。好きなひとに、自分以外の女の子への告白の後押しなんて・・・。 尚登くんとつきあうようになったものの、まだあたしの心のなかには亨がいる。一生懸命あたしのことを思ってくれる尚登くんには悪いけど、正直言ってまだ亨のことをあきらめ切れてない。 「あたしのほうこそ、『どうせふられるならあたって砕けろ』よねぇ・・・」あたしのつぶやきはむなしく夜空へと消えて行く。 そんなあたしの想いを知ってか知らずか、亨はあたしの言葉を聞くなり目を輝かせて、 「そうだよなぁ、やっぱり。どーせふられるのを覚悟してるなら恐いもんなしだよな!ありがとう、美和子!!おまえに相談して良かったよ。やっぱ持つべきものは良き女ともだちだよなぁ」 その一言が、あたしの心を突き刺した。 こころが、いたいよ・・・・・。
「瞳子!」 「瞳子ちゃん!」かけよるあたしたちを見ても瞳子ちゃんは何の反応も示さない。 うつろな瞳、おぼつかない足もと。瞳子ちゃんの、いつもの凛とした雰囲気は消え去っている。 「瞳子ちゃん、家に帰るのが嫌なら、今日は家に泊まんない?ちっちゃい頃みたいにさ」 「・・・・・・・・・・・・・・・」瞳子ちゃんがうなずく。 不安げに見つめている亨に「心配するな」と声を出さずに唇と目で合図する。 「まかせたぞ」亨がうなずいた。
あたしの部屋に帰りついても、まだ瞳子ちゃんは感情のない人形のような状態 だった。そんな瞳子ちゃんに、あたしは必死に語りかける。 「あのね、瞳子ちゃん。泣きたいときは泣いていいんだよ。疲れたときは休んでいいんだよ。あたしたちじゃ瞳子ちゃんほど頼りにならないと思うけど、何でも聞くから。何でも話してよ。」 その瞬間、今までなんの反応も示さなかった瞳子ちゃんが、声をあげて泣き出した。今まで押さえつけていた心をすべて吐き出すかのように。 こんなに取り乱して泣き崩れる瞳子ちゃんを見たのは、十二年間一緒にいて初めてのことだった・・・
(『愛しのハピィデイズ』 �イ紡海�)
2002年05月12日(日)◆◆
|
|
|
◆◆enpitu menu◆◆
|
My追加
|
enpitu skin:[e;skn]
|