私信
あなたに名前をつけようと思う 高いところ とか うつくしいあさって とか 子どももまた とか かわいそうなはなし といったことを
へんにまじめなように顔をつくって 息をしないまま 置いておこうと思う はじめの白紙
ひとふしは 結局こうだ 「わたくしたちはいつも
ぎざぎざとした 筆算の かたち クローバをかきたいのは あなた
あなたの言葉や 襟 あと荷物のたぐい 曲がらないように 線を引いておいたのは やわらかなえんぴつが 紙の おもてだけで すべること
淡く 淡く すこうしだけ ゆっくり
あなたの名前は印刷に黒く すこうし さかなのくちに似ていると思った ていねいに並べておく 活字 の 行間を ていねいに つめておく
せんから しまいまで黒いね インク? ああ インク ?
つめくさ て 低いところの草の名前だ 上靴で踏んだり しあわせって言ったり した 低いところの 名前だ
印字でてがみ 書いたりしたら きっとごめんなさいをする 明日も 明後日も 次の日にもう一度 と 思い出したらもういっかい ごめんなさいを する
あなたに名前をつけようと思う 例えば つめくさ というような
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