みやにっき
詩人を名乗ることにした。

2004年04月04日(日) つつじの下で会おうね

バネが死んだ。

昨日の夜には元気だったのだけど。
あさ,まだ寝ているようなので起こさずに買い物に出かけて。
夜になって帰ってきてみたら,巣箱から出て,死んでいた。
ヒーターで温められた上に横たわっていたので,凍死ではないだろうと思う。
ここ2週間ほど,ずいぶんとのたのたとだるそうで食が細かったので。
正直,もうそろそろかなあ,と,思っていた。
君の死を待っていたわけではないのだけれど。
もうそろそろかなあと思ったので。
ネジの時のように後悔しないように,
大好きないちごとくっきーを,食べさせてあげてた。
それだけだ。
それだけが,おぼろな,自己満足だ。

ネジが死んだのが3月3日。
バネが死んだのは4月4日。
仲良しだったのかなあ,と,ぼんやりと考えている。

ネジはいくぶん灰まじりだったのだけれど,バネは真っ白で。
目がとても大きくて細長い顔で,左の目の方が大きい。
菜っ葉が好きだったね。
とかくよく噛む子だった。
好奇心旺盛で,物音がするとすぐに見に来るくせに,
臆病で,ちょっとでも手を近付けると「じーっ!」て怒って逃げる。
脱走した時には,ネジみたいに近付いてこないので,捕まえるのが大変だった。
実家に連れ帰った時には風呂場の中に逃げ込んだのだっけ。
手を出すと噛むのだけど,秋ごろからあまり噛まなくなった。
特に3月にネジが死んでからは,ちっとも噛まなくなった。
今までは逃げてばかりいたのに,僕の手から餌を食べた。
なぐさめてくれたのだとか,そういうことは,ないだろうと思う。
でも君は,僕の救いだった。
そんな風に書いてしまうとひどく陳腐だけれどもね。
僕は。
まいにち,おはようって,ただいまって,言って。
なあに?ておきてきたおはなをちょんちょんとして,大好きだよって。
ああ僕の言葉にはちゃんと,いのちがあるって。
おぼろな自己満足で。

ねえ,ちっちゃい子たち。
何がきみたちのさいわいなんだか,僕には,よく,わからないよ。
僕はそんなに極悪な飼い主というほどではないと思うので,
たぶん,売れていったきみたちは,似たりよったりな生を過ごしたんだろう。
あの店のあのケージに入れられた時,いやそれ以前に,
商品の生産として生まれた時からか。
売れても売れなくても誰が買っていっても,あまりかわらず。
きみたちははじめから,こうした生を,約束されていたのだろうか。
愛玩の生。
僕は人以外として生きることなど想像できずにいるのだけれど。
きみたちがハムスター以外の生き方をすることも想像がつかないのだけれど。
ねえ,ちっちゃい子たち。
何がきみたちのさいわいなんだろう。
そしてエゴまみれな僕は,また,いつか。
売り場に並んだ,きみたちの生を,自分の手に迎え入れて。
僕のために生きてくれって,言うんだろう。
あと二年くらい,僕と,生きてくれって。
僕の家の,僕の目の届くところで,僕のために生きてくれって。
言うんだろう。
どうせどこの家に行っても同じく生を生きるのだからとか言いながら。

ねえ,ちっちゃい子たち。
僕はね。
言うと陳腐になるの知っているけれどもね。
いましばらく,自分の罪を上げ連ねて,後悔させておくれね。
何について詫びればいいのか,よく,わからないんだ。
何がいちばん間違っていることなのか,よく,わからないんだ。
何を償えば気が済むのかさえも,わからないんだ。

かなしい。

あした,起きたら。
ネジのお墓のとなりに,バネを埋葬します。
一緒のつつじが,咲くでしょう。
僕はそれを見る。
僕は,それを,見ます。

ばね。
ばね。
ぼくのちっちゃいこ。
ぼくのおはようとただいま。
ぼくのおはようとただいまに,さよなら。


 <なんだっけ?  まとめて  そんでどう?>


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