りんご → ごりら
アクティブなゴリラを肉眼で見たことはない。 画面の中の野生はそれなりの様子なのだけれど。
それこそ幼児の頃からずっと行っている地元の動物園があるのだが。 20年以上前からいる彼は同じ彼なんだろうか。 違う彼なんだろうか。 僕はそれを見分けることができない。 きっと今,檻の中にごろごろとしている,牝と雄の二匹ですら, 動物園を一周して戻ってきて位置が変わっていたなら,見分けることができない。 人はおサルから進化したのですって。 でも,ねえ,君と僕はずいぶんと違うのだね。 僕は君をきっと見つけられない。 君は僕を見たりもしない。 ゴリラの視力ってどのくらいあるんだろう。 ゴリラの聴力ってどのくらいあるんだろう。 ほとんど群体に見えるだろうこちら側を固体識別できるのかな。 そもそもそんな必要がないからしないのだろうけれども。 君にこんにちはと言ってみたい。 君にこんにちはと聞かれてみたい。 何の意味も利益も何も何も何もないのだけれども。 君がそこでそうしてごろりとしたりごはんを食べたり寝たり起きたりしている その生の意味がわからない。 そんな必要がないから,僕のあたまは,君をちっともわからないよ。 そんな必要がないから,君は僕を見たりもしない。 こんにちは少しさみしいね。 こんにちは少しさみしいね。 人はおサルから進化したのですって。 でも,ねえ,なんだかひどく遠いものだね。
君がそんな風にして,人を思わずにいられる形でいてくれたなら。 僕はきっと,あんまり泣いたりはしなかったろうと思う。
ごりら
必要な楽器 と 言われています 必要な楽器と そうして 準備されています 準備されています
肩 と 腰 と 見分けられないままです
にぎりこぶしで地面をおさえ われわれはおさえ ああ おさえ あごをあげておくのです
けして崩れぬように
必要です 必要な森林です 準備されています おしまい から はじめまで 丁寧に 丁寧に 準備されています
あごをあげておきます けして崩れぬ 見分けのつかない この世界の けして崩れぬ地面のために
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