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2002年09月07日(土) 誉めるお手本…

ピアノを習っている多くの方が、レッスンで誉められると励みになって練習がはかどる…という風に感じていらっしゃるのではないでしょうか。
数あるピアノ指導の本でも、誉める指導は語られていますし、このHPにおいでくださるピアノ指導者の皆様も、誉めることの大切さは、実感されていると思います。

でも、実際にどのような言葉で誉めたら伝わるか…というのは、なかなか難しいものです。
そこで、誉めるボキャブラリーを増やすために良さそうな本を2冊ご紹介してみます。

『清水義範の作文教室』(ハヤカワ文庫刊)
『作文ダイキライ 清水義範のほめほめ作文道場』(学研文庫刊)

作家の清水義範さんが小学生に作文を指導する…という内容の2冊です。
清水さんの文章や、ユーモアがあり読みやすく、理路整然としていてわかりやすいので、愛読されている方も多いと思います。
その清水さんが、弟さんの経営する塾の生徒達が書いた作文をFAXで受け取り、添削して送り返す…という作文教室をされていて、その最初の1年間の様子を本にしたのが、『清水義範の作文教室』。
それが評判になり、学研の学習雑誌上で、読者の小学生から送られてきたものを指導したのが『作文ダイキライ』です。
どちらの本でも、小学生の作文と、それに対するコメント(このコメントがとても良いです)、それとは別に、清水さんの子供への作文指導に対する考え方が書かれています。
人気作家に作文を添削してもらう機会に恵まれるなんて羨ましい限りですが、この清水さんの子供に指導する際の考え方…というものが、非常に的を得ていて、なるほど…と思わされました。

私には子供がいないのであまりわかったようなことは言えないのだが、子供というのはまだるっこしいものである。何度も何度も同じ事をアドバイスして、ごくまれに少しだけ進歩してくれる。ついにこっちの言う事が通じなかった、ということのほうが多いであろう。
で、進歩してくれたのは嬉しいことであって、これが教育の喜びというものだなあ、と思っていると、ひょいと足元をすくわれる。次の壁にぶつかったり、迷いが生じたり、スランプにおちいったりして、子供はもとの低レベルのところへ、それどころか最初よりヘタなレベルへ落ちこんでしまったりするのである。そう簡単に、教える、学ぶ、上達する、というわけにはいかないのだ。
子供に教育するには、気を長く持たなければならない。せっかちに、うーむまだわからんのか、と思ってしまってはいけないのだ。あせらず、じっくりとつきあい、イライラしてもそれを見せず、ほめて励まして教育をくり返す。
そういうことを何年も、最低でも1年は続けて、それでようやく少しは進歩、成長してくれるかな、というところである。一年やれば、確実に何か、少しでも育ってくれるように思う。
だから、数ヶ月指導しただけで、わかってくれないなあ、と嘆いてはいけない。どうしてうまくならないんだと、イライラしてはいけない。子供とは、行きつ戻りつ、その積み重ねによって、ようやく少し成長するものなのだ。

(『清水義範の作文教室』より抜粋


子供の教育について、こんなにも完結で分かりやすく、的を得て書かれた文章に接する機会は、そんなに多くはありません。
ここに書かれていることは、作文に限らず、教育の全てに当てはまると思います。
子供だけではなくて大人にも、有効かも知れません。

そして、このような考え方に基づいて書かれた各々の作文へのコメントの素晴らしさ!
誉める…というのは、(少なくとも指導のプロの場合は)むやみやたらに誉めれば良いという訳ではないのです。
的を得て誉めなくては、進歩への糧にはなりません。
その点、清水さんの誉め方は、すばらしいです。
そういう誉め方を学びたい指導者の皆様に、是非ともオススメしたい2冊です。
もちろん、小学生のお子さんをお持ちのお母様にも、オススメいたします。
子供たちの作文もかわいらしくて、楽しめます。 (^m^)


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