「人間」菅井優児
DiaryINDEX|past|will
俺は大学生の時に原付の免許を取りにいった。
大学生くらいなら自動車の免許を取りにいけよ、と思う人が殆どだろうが早くても1ヶ月かかる講習が面倒だったのだ。それに車を買う余裕も無いし、大学やバイト先までの交通手段は地下鉄やバス、自転車で事足りていたからである。
その点、原付は筆記試験に受かれば数時間の実習を受けるだけでその日に免許証がもらえるのである。
というか別に原付も乗りたいわけではなかった。高校生の頃、友人の原付を2台破壊した自分にとってエンジンのついた乗り物は一生縁の無いものと思っていた。
では何故乗りもしない原付の免許を取ったか?
レンタルビデオの会員証を作る際に身元を証明するものが必要となる。 俺は保険証でそれを作っていた。しかし、20歳を過ぎても保険証でしか身元を証明できない自分が恥ずかしく思えてきた。さすがにビデオの会員証ごときでパスポートを見せるわけにもいかない。
免許が欲しい・・・。
そして2日にも及ぶ猛勉強の末、見事に原付の免許を取得した俺は喜び勇んで新しいビデオ屋で会員証を作った。
つづく
|