森岡万貴 徒然記 (黒いブログ)
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| 2002年07月07日(日) |
徒然なるN.Y.紀行(3) 感じてしまうこと。 |
ニューヨークへ来て初めて、昨夜は時間的には少ないけどやっと熟睡が出来たので、よし。時差ボケはもう大丈夫だ。と思ったんですが、この日から帰国まで、全然寝られない日が続くことを、森岡万貴はまだ知らない。。。お〜こわ。
今日からいよいよ舞台稽古です。予想通り、波乱万丈、森羅万象。 なにせ、チーフを除き殆どが現地スタッフ。言葉の壁もあり、なかなか思うようには進まない稽古。時間だけがどんどん過ぎて行きます。
アメリカではユニオンが強力なので、どんなに予定より遅れていても休憩時間になると容赦なく休まねばならんのです。 1分1秒でも過ぎると、舞台に居るだけで怒鳴られる。早口の英語で。お〜こわ。 ひそかに「ランチおじさん」と呼んでいたコワモテの相撲レスラーみたいなマネージャーが発する「Lunch!」の一撃で、猫も杓子も泣いても笑ってもナダメてもスカシてもスガシカオも、 ランチなのだ。
それでいて、開始時間にはとってもルーズな人もいたりして。 さらに輪をかけてイカンことに、場当たりやってんのに舞台上で寝てる巨大な黒人さんまで出現。 俳優O氏は、故意か否かは定かではありやせんが、踏ん付けちゃったそうです。 しょうがありません。だって暗くって全く見えないんだもん。暗闇から、巨大掃除機かと思わせるゴォォォォォォという重厚なヒビキ、いや、イビキだけが聞こえてくるんですよ。コワイです。っていうか、寝んなよ仕事中に。
怪我と向かい合わせの危険なシーンが多い役者さん方は、完全にご立腹。
私には分かっていた。 ナメているのだ。ジャパニーズ?なにそれ、中国? くらいなんだろう。アジアはひとくくりで、国の区別は正確には、無い。
昨年、とある現場で沢山のアメリカ人と仕事をしていた時に、ときおり感じたことだった。 みんなすごくいい人なんだけど、本当に仲良くなるまでは、言葉や振る舞いの端々にどこか見下したようなフレーズを嗅ぎ取った。 戦争で勝った国と、負けた国。 歴史は潜在的にわずかでも先入観を刷り込むのだろう。 悪気はなくても、それが毛穴から微量に発散されている人がいるのだ。
昨日のレンタル楽器事件についてもそうだった。 蓋を開けてみると、 ・音程が異常に低いシロフォン ・完全に金属疲労済みのトライアングル ・上下バラバラのスタンド などなど。頼んだのに届いていない楽器だって幾つかある。 特にトライアングルは、後世に語り継ぎたくなるような想像を絶する代物がやってきた。
普通トライアングルというのはですね、文字に変換すると、
「チーーーーーーーーーーーーーーーーーン〜〜。」
ですよね。 で、届いた楽器を打ってみると、
「チ。」
っていうんですよ。 へ?余韻は?余韻は?って、いくら空気中を探しても見当たりません。 これははたして、楽器と言えるのでしょうか?(言えるワケないっしょ。)ただの鉄屑です。
レンタルで食ってる楽器屋さんがですね、こんな楽器達で仕事が成り立つはずがないんです。 ということは。明らかに、二軍楽器が届いているのです。 その証拠に、昨日「こんなの使えるかぁッ!」と吠えて交換を依頼したら、何時間後かにはキチンとした立派な楽器がくるんだもん。 最初から、何故にこっちを持ってこんのじゃ!?
森岡万貴は、静かに思いました。
「なめとんな。」
あぁ、またか、と思ってしまったのは自分でも悲しいことですね。
交換してもらうといっても、狭い空間に5ミリ間隔くらいで緻密にセットしたおびただしい楽器達に加えて、既にPAマイクが立っているので、その中の楽器を入れ替えるのは一苦労どころではありません。最初から普通の楽器を入れておいてくれれば、、、。
ほんとはね、みんな(じゃないかも知れないけど)根はとってもイイ人だし、優劣なんか今更無いって、ちゃんと付き合えばすぐに分かってくれるってことも知っているので、腹を立てずに、なるべくコミュニケーションを取ることを心がけていたんですが、やっぱりちょっと寂しかったな。
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