森岡万貴 徒然記 (黒いブログ)
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2002年07月10日(水) 徒然なるN.Y.紀行(6) 惚れたゼ

怒濤のように駆け抜けた初日が、予想以上のあたたかい拍手の中、無事に終わりました。音楽監督、美術・音響・照明プランナー、振り付けなどの制作サイドのスタッフは、今日の便で帰国します。
昨夜は、森岡万貴を「娘」と可愛がってくれる、音響プランナー「とうちゃん」(と勝手に私が呼んでいる)の送別飲み会に参加しました。

ホテルの1Fにある高そうなバーに初めて潜入(とうちゃんありがとう)。そう言えば、ニューヨークに来て初めての飲み会かも。

ビール片手にアツアツのエスカルゴを食べる。あぁいい感じ。

しばらくすると、亜門さんの姿が。

ガラス越しに眺める56th Street。やっとニューヨークの景色が突拍子もないものではなくなってきたような気がする。

ーーーー浅い眠りーーーー

通りかかったデリの店頭で売っている、向日葵の美しいこと!!
ニューヨークは、向日葵がとっても良く似合う街だと私は思います。

2日目の公演も、無事に終わりました。
今日は、音響、照明、舞台監督さん達、スタッフ飲み会に参加!(飲んでばっかり!?)
セントラルパークからすぐの、めちゃくちゃ賑やかな(と言うよりウルサい)バー。日本で言うと、白木屋とか村さ来とかでしょうか。
照明オペレーターの方と、初めてお話しました。
なんと、こっちでは、日本人スタッフは機材を触っちゃいけないんですって!!!
アメリカの労働組合の規定らしいんですが、実際にタクを操るのはアメリカ人スタッフだけ。日本サイドのスタッフは、口頭で指示を出すのみなんだそうです。

森岡万貴は、死ぬほどビックリしました。

3時間の公演中、照明切り替えのキューは、200カ所以上あるんですよ!
それも、役者の歩き出しとか、床に倒れた瞬間とか、セリフを発する瞬間とか、ものすごいキワドいタイミングで。
歩き出しちゃってから切り替えたらもう遅いんで、さあ足を出すゾ出すゾ、、と言う「呼吸」とか「間」を感じ取って、一か八かほんのわずか前で切り替えないといけません。
こんなの、舞台の流れを丸暗記していたって難しいのに、その上自分でやちゃいけないんですよ!?

まるまると太ったアメリカンが緊張感なく照明タクに座っていてですね、その隣でいくつものモニターを睨みながら

「スタンバイ」 でスイッチに指をかけさせ、
「GO!」 でスイッチを押させる。

を200回以上やるんですよ!?ヒエーーーー

アメリカ人スタッフは、芝居の内容や緊張感と関係なく、「GO!」と言われたらソーセージみたいな指でスイッチを押すだけ。
当然、時差があってちょっと遅れるので、キューのタイミングは役者の呼吸より更に更に!ほんのわずか早めにださなくちゃぁいけません。
キュー出しが完璧でも、アメリカンが同じ気持ちでボタンを押してくれる訳ではないので、予想外に遅れたりすることも度々。

「めちゃくちゃ歯がゆいですね。自分で押せれば。。。」

言うまでもなく、照明が切り替わらなかったり、ヘンなところで切り替わっちゃったりしたら、舞台は壊れてしまう訳です。

考えても見てください!1人でやりゃあ済むものを、2人でやっているために格段に仕事が困難になっている。通訳さんを通すからますます時間がかかる。人件費だって2倍いる。
2人でやるメリットって、1つも無いどころか、、、



ななな!なんてイケてないシステムなんだぁぁぁぁ、、、、アメリカ!ヘンだぞぉぉッ、そこぉぉぉッッッ!!!!!

それにしても、こ、ここ、、、これは想像を絶する過酷な仕事だ。。。
「とても難しいけど、この環境の中で可能な限り高いクオリティに近づける、それしかないです。」
これが、プロフェッショナルと言うものだ。
たんたんと静かに語るK氏を、森岡万貴はもう、ただただ尊敬していました。

照明チーム一つ取ってみても、こんなに隠れた苦労があるんです。
音響、衣装、舞台、音楽、、、どの部署も問題を抱えながら悪戦苦闘して、この場で出来うる限り理想の作品に近づけていく。

一つの舞台を創るのに、スタッフの計り知れない努力が幾重にもあることを、再確認した夜でした。

だから、素敵なんです。舞台は。


maki morioka |HomePage

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