森岡万貴 徒然記 (黒いブログ)
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| 2002年07月11日(木) |
徒然なるN.Y.紀行(7) ニューヨーク初めての涙 |
昨日、照明オペレーターK氏のお話を聞いて、気持ちも新たに3日目の本番を迎えました。
ところで、セッティングの日から気になっていた物があるんですが、私のパーカッションブースの中に、カメラが設置されてあったんです。 ちょうど顔の高さくらいで、明らかに私を狙うアングル。
「・・・なんで私を映してんのかな?」 一体誰が見ているんだろうと不思議に思っていたら、昨夜疑問が晴れました。
私は肉眼で舞台を見ながら、役者さんが座るタイミングとか、息を飲む瞬間とか、転換が完了した瞬間とか、ココぞと言う大事な瞬間に「木」を打っているんですが、私のこの「木」が音を発する瞬間に照明を切り替えるところがあるんだそうです。
「木」が鳴った瞬間で、同時にバッと照明が替わる。 これが理想なので、K氏は私のアップが映ったモニターを睨みながら、私がまさに木を打たんとする、ほんの一瞬の呼吸と予動をかぎ取って
「GO!」
を出すのです。 私は役者さんの心の動きをなるべく汲み取って芝居に同化して「木」を打っているので、当然いつも決まったタイミングやフィーリングではありません。切迫したシーンでは、殆ど前置きなく息を詰めていきなり打ったりします。 これにキューを付けてくださっていたなんて、信じられない!神業です。 もう、まったくもってますます尊敬してしまいました。
このカメラは、照明の他にも指揮者や舞台下手、上手、音響などにも私の映像を送っているそうで、責任の重さを痛感すると同時に、スタッフさん達とガッチリとタッグを組んでもらっているような心強さも感じました。
今日の本番は、だから、ものすごく新鮮だった。鳥肌が立って、ゾクゾクしました。爽快な緊張感でした。 カーテンコールの歓声の中、やっと緊張感から醒めて、私の横の小さいカメラからはるか客席3階の照明さん、客席1階の音響さん、舞台下手にかすかに見える舞台監督さん、衣装さん、、、と順番に目を移していると、自然と涙がとめどなく溢れてきて、グチャグチャになってしまいました。 そして気が付いたら、横のカメラに向かって「ありごとうございました。」とつぶやいて頭を下げていました。
森岡万貴、ニューヨーク初めての涙でした。
初日と2日目は、なんとか無事に本番を終えた安堵感が先にきて、感動する余裕も無かった感じですが、やっと今日。
心の底から、ここで仕事が出来て良かったと思いました。
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