酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
DiaryINDEX|past|will
2002年09月04日(水) |
親不孝通りディテクティブ |
北森鴻さんをはっきり認識した作品が、この 『親不孝通りディテクティブ』 です。この作品にはまって北森鴻制覇をしていたら、何作品かは読んでいました。今は新刊、蓮杖那智シリーズ 『触身仏』 が楽しみv 早く読みたい〜。きっとまた冬狐堂シリーズと微妙にリンクするだろうなぁ。楽しみ倍増vvv
親不孝通り、博多で恋旦那としあわせな生活を送った私には想い出のストリート。このタイトルに惹かれて手にした本でした。本格的な北森さん読みになったのは、この本の出た去年の2月からあと。
親不孝通りと言うのは、博多にある大手予備校が密集した地域のことを指します。本当の名前は別にあります。作品の中でも書かれていたかな。福岡駅と呼ばせず、博多駅と呼ばせ続ける山笠の街。私はいつでも郷愁を感じてしまう。いつかあの街に帰りたい。風が空気が自然に馴染む街なのです。そしてなにより酒呑みの街。街じゅう総酔っぱりゃーみたいな感じ(笑)。
物語は、主人公テッキの経営する博多名物の屋台からはじまります。カモネギコンビのテッキ(鴨志田鉄樹) とキュータ(根岸球太)。 キュータはテッキの高校からの友人で相棒、ふたりの高校時代の教師であるオフクロの結婚相談所の捜査員。閑古鳥が鳴く日のテッキの屋台にはさまざまな問題を抱えた人間が立ち寄って事件を落としていく。好むと好まざるに関わらず事件に関わらざるをえないテッキとキュータ。
テッキが屋台で作るカクテルは、酒呑みなら涎をたらして呑みたいと思うはず。私が一番呑んでみたいと思うのは、 「地下街のロビンソン」 で、 《歌姫》 が呑む ‘ノックアウト’! これは大の男が飲んで三杯で確実にノックアウトというシロモノを、 《歌姫》 が立て続けに五杯呑むシーンがかっこいいからかもしれません。 《歌姫》 みたいなシンガーがあの街には埋もれていそうだもんなぁ。そんな街。いっしょに呑んでみたいなぁ。
6つの短篇で6つの事件が起こり、いろんな真相にテッキとキュータはたどり着きます。私が一番好きなのは、最後の 「センチメンタル・ドライバー」。 何度読んでもこの最後のところで私は必ず泣きます。 アガサ・クリスティのポワロシリーズで言えば、 「カーテン」 にあたる内容。
テッキが、オフクロのためにした行為は許されることではない。でも、私はテッキを許してしまう。キュータたちが、テッキの屋台を守りながらテッキの帰りを待ち続けますが・・・。テッキは、自分で博多を帰れない街にしてしまう。心臓を鷲づかみされるような望郷の念を抱きながら。
北森鴻さんの作品は、どれを読んでもおもしろいと思います。一番最初に書いた冬狐シリーズや蓮杖那智シリーズは、あっと言う間に物語に引き込まれてしまいます。それでも私があえてこの作品を選んだのは、テッキの望郷の念に通じるものを心に抱いているからかしら。 博多、人情と酒の街。
『親不孝通りディテクティブ』 2001.2.25. 北森鴻 実業之日本社
|