酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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西澤先生の掲示板で、よく話題になる作家さんのおひとりが鯨さん。その流れで鯨さん作品はかかさず読むようになりました。ちょうど去年の秋くらいだったと思いますが(おぼろげ〜)、『鬼のすべて』 を読んで、“うわっすっごーいっ!” と感服してしまいました。そのあとも涙研究所とか酒に絡む話とかなかなかに良い感じでした。そこでまたガツンときた作品が 『タイムスリップ森鴎外』 でした。本当はここにそのモリリンのこと書くつもりだったのですが、只今読みたてほやほやの違った角度からのスマッシュヒット! 『ふたりのシンデレラ』 をあげたいと思います。ネタバレになるからあまり書けないけど。むー。
ダ・ヴィンチ10月号に鯨さんのエッセイがあります。そこや本の表紙の裏に乗っている惹句を拝借v 《わたしはこの事件の証人で犯人で犠牲者で探偵役でワトソン役で記録者で容疑者で共犯者》 このひとり8役を見事に料理されておられますです。ははーっ。平伏。ちなみにエッセイによると、鯨さんはジャブリゾの 『シンデレラの罠』 に挑戦しているのだそうです。フランスの名作ミステリで、探偵であり、証人であり、被害者であり、犯人でもあると言うひとり4役の 『シンデレラの罠』 は残念ながら私は未読ですので、いつかは読んでみたいと思います。そのうえで鯨さんの 『ふたりのシンデレラ』 が 『シンデレラの罠』 を超えているのか、どうか。とても気になるところです。どうもミステリー作家さんって挑戦したがりさんが多い(笑)ような気がするのですけど。 なんだかとってもチャレンジャー。
物語はいきなり、犯人のモノローグからはじまり、突如いやぁーんどきどきシーンに展開します。舞台は文字通り劇団なのでまさに舞台。劇のヒロインをめぐって起こる孤島での殺人劇。古典的でもあるのですよねv 物語の劇団の脚本が重要な鍵となっていくこともうまい。脚本も面白いし。
読んでいて、物語の半ばで犯人とトリック (と言うよりからくりだな) はわかってしまいました。それでも最後まで面白く悲しく読ませてくれるし、ぴたぴたぴたとオチが綺麗にはまっていくのは読んでいて快感です。装丁のイラストは、最近よく見かける亀井洋子さんのイラスト。素敵です。しかし亀井洋子さん今売れっ子だなぁ。本は装丁 (イラスト) も命。
これ以上はもうネタばれなので書けません〜。間違いなく面白いので読んで〜。 『鬼のすべて』 と 『タイムスリップ森鴎外』 もあわせてオススメいたします。
『ふたりのシンデレラ』 2002.9.2. 鯨統一郎 原書房
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