酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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ここ数年、電脳社会に泳ぎ出るようになって預かった恩恵のひとつにあげられることに、じょうずに本の情報を得ることができるようになったことがあります。仲良しの本仲間からの情報は勿論、出版社サイト、作家さんサイト、本読みさんサイトなどなど。そうやって情報収集をしていくうちにその昔は <漠然と手にして読んでいた> から <意識をして本を探す> に変わってきたように思います。今までは、たいして気にも留めてこなかった ‘なんたら賞’ もの。あまり流行に流される人間じゃないんで、面白ければどうでもよかったと言うか (ずぼら〜)。まるで気にしていなかったのですね。でもやはり賞を取る作品には、本の方から呼ばれたことも多々あったことだし、気にかけるようになりました、とさ(笑)
その ‘なんたら賞’ ものでも、私が意識外でも意識し始めてからも、読んでいい手ごたえを感じる作品が多い賞が江戸川乱歩賞。この歩賞は、ものすごく歴史があって、なんと昭和30年にはじまっている。すごいなぁ〜。読んだ作品は時系に沿ってはいないのですが、賞の時系列であげていきます。 『高層の死角』 森村誠一、 『アルキメデスは手を汚さない』 小峰元、 『蝶たちは今・・・』 日下圭介、 『ぼくらの時代』 栗本薫、 『写楽殺人事件』 高橋克彦、 『放課後』 東野圭吾、 『花園の迷宮』 山崎洋子、 『風のターンロード』 石井敏弘、 『顔に降りかかる雨』 桐野夏生、 『テロリストのパラソル』 藤原伊織、 『左手に告げるなかれ』 渡辺容子、 『破線のマリス』 野沢尚、 『八月のマルクス』 新野剛志、 『脳男』 首藤瓜於、 『13階段』 高野和明、そして今回の 『滅びのモノクローム』 三浦明博です(以上敬称略です)。48回のうち読んでいるのは、たったの16作品!? あぁ、ワタクシもまだまだよねぇ。ハァ〜。本気で深いため息が出てしまいました。おーしv またがんばろーっと。
私が、本を読んで最後のページで胸が熱くなって泣ける。それは私がその本に対して「ブラボー!」と叫んでいるのです。今日、のんびり本を読んで先ほど読了。そしてそのブラボー! だったの。感動。 またもやダ・ヴィンチからあらすじ拝借; 《仙台の広告マン日下哲は骨董市でレアな釣り用リールを手に入れ、オマケ品のスチール缶から見つけた古い16ミリフィルムを広告に使おうとする。同じ頃リールを売った日光の老舗旅館の娘・月森花はそれを祖父・進之助に伝えていた。だが、話に何故かショックを受けた進之助は倒れて入院。花はリールを取り戻そうとするが・・・》 どうしてみんなあらすじをネタバレにならずにこういうふうにうまく書けるのかなぁ。私にその才は皆無。あ、余談ですけどね。
この物語、面白いと言うだけではなく、人間として読んでおいて欲しいなぁと思いました。テーマは、戦争や戦後の闇、そして父と子供の絆かな。私も戦争を知らない子供たちのひとりだけど、あの一年前のテロ事件の時には、戦争がおこるのではという恐怖を体中で感じました。戦争が巻き起こしてしまう戦時下の群集心理、禍々しい空気に飲み込まれ、本来ならしないような残酷な過去を背負ってしまう。そんなことは私たちの未来には断じてあってはならないことです。物語は、サスペンスなので、どきどきはらはらと展開を追いかけることができるので、決して全編を通じて重苦しいものではありません。むしろ出てくるキャラクターたちがいい味だしているので、笑えるほどです。まぁ、ちょっとマリモのこと見たくなくなったけど(苦笑)。←理由は作品でどうぞ。 お気に入りキャラはカルトなあんちゃんです。
『滅びのモノクローム』 2002.8.5. 三浦明博 講談社 第48回江戸川乱歩賞受賞作品
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