酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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鮎川哲也さんが、9月24日にお亡くなりになりました。私は鮎川さんのご本より、鮎川さんが見出された作家さんのご本をたくさん読ませていただいています。本関係のネット世界にこのニュースが駆け巡り、鮎川哲也さんを悼む気持ち一色になりました。 ご冥福をお祈り申し上げます。
酩酊本処に書きたい本(作家さん)は、まだまだ尽きません。 今回は鮎川さんに敬意を表して、鮎川さんに見出されたおひとりの今邑彩さんを。
今邑彩さんは、1989年に「鮎川哲也と十三の謎」の十三番目の椅子を射止めました。 今邑彩さんの作品は、ホラー・ミステリィ・ファンタジーなど作風も多彩(多才)。 今回、私がオススメしたいご本は、私が一番好きな 『よもつひらさか』 です。 今月集英社から文庫化されましたので、興味を持たれたら読んでみてくださいね。 これは、短編集なのですが、一番最初の作品は1993年に書かれたそうです。 時代が流れ、内容に手を加えようかと考えたそうですが、あえて発表当時のままで手直しを入れなかったと言うことです。ほんの10年前と今の違いも楽しんでください。 『よもつひらさか』の中からいくつかを簡単にご紹介。
「見知らぬあなた」 不思議な文通相手の正体に気づいた時、彼女はいったいどうするのでしょう。
「時を重ねて」 友人の妻の浮気旅行を調べた男の見たものは・・・。あるといいな。こんなこと。
「ハーフ・アンド・ハーフ」 分かれる時には、もめないためにきっちり‘ふたつ’に分けましょう。ふっ。
「穴二つ」 今ほど電脳世界が身近になる前だからこその物語。
「生まれ変わり」 いわゆるとてつもなく気の長ぁ〜いストーカーの狂気の世界。
「よもつひらさか」 私が、今邑彩さんの物語で一番好きな作品。 黄泉比良坂、あの世とこの世の分かれ道と言われる坂です。 そこで亡くなった誰かに出会っても、すすめられたものを口にしてはいけません。 そのままこの世に帰ってこられなくなるからです。
この『よもつひらさか』の装丁は、みなさまお馴染みの《北見隆》さん。 実はこの本は、図書館で発見し、タイトルに惹かれ、手にして、装丁に惹かれ、はじめて読んだのでした。それが今邑彩さんとの出会い。他の作品では、『かなわぬ想い』、『盗まれて』、『鋏の記憶』、『七人の中にいる』なども面白いと思います。
『よもつひらさか』 1999.5.30. 今邑彩 集英社
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