酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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柴田よしきさんと言えば、RIKOシリーズに都シリーズ。どちらもヒロインたちが強く美しく読んでいてわくわくどきどき。次回作が楽しみでたまりません。待ち遠しい〜v ちなみに柴田さまのペンネームのよしきは弟さんのお名前をいただいているとか。
多作な柴田さま(ワタクシは物心ついてからこうお呼びしている)の作品の中で、ワタクシ的ナンバーワンは、『桜さがし』が不動です。 『ふたたびの虹』も負けず劣らずほのぼのと心が暖かくなるので好きですが、浅間寺竜之介(せんげんじ)のある限り、ナンバーワンの座は揺るがないでしょう。浅間寺せんせーの嫁になりたい〜。
『桜さがし』は、柴田さまがお住まいの京都を舞台にした物語。もと教師で作家となった浅間寺と、彼のかつての教え子、成瀬歌義(歌やん)・田津波綾(あや助)・安枝陽介・大河内まり恵の4人が、さまざまな京都ならではの事件や人間模様に遭遇します。 恋愛や人生に悩む4人と、それを見守り、時に叱咤激励する浅間寺せんせい、ラブ。
「一夜だけ」では、柴田さまのご趣味のきのこ狩りを彷彿とさせてくれる美味しそうなきのこ料理が出てきます。食べてみたいぞ。山奥のログハウス(もどき)でわいわい言いながら食べたらさぞかし美味しいことだろうなぁ。この物語では、歌やんとまり恵の終わりかけた恋愛の行方が気になります。浅間寺せんせいの言葉や、ふたりへの対応は、もう大人のオトコって感じで惚れ惚れします。あぁっ浅間寺せんせい嫁にしてっ。
「何を言われても、決めるのはおまえや。後になって誰それのせいでこんなになった、てぼやくのは筋が違う。おまえが決めたんや、最後はな。それを忘れたらあかん」 私は、まり恵への浅間寺せんせいのこの言葉にびりびりとしびれました。
ちょいと話が、ずれますが、(いやまぁ、いつものことですが、はい)、この浅間寺せんせいの言葉は、人としての基本姿勢だと思うのです。私は、早々と未亡人になりながらケタケタ笑って生きているせいか、よく相談をもちかけられます。気になるのは、なにかと悩みを自分以外のなにかのせいにしたがる人が多いことです。私は、必ず言います。今現在自分が立っている立ち位置は自分で選んだ結果でしょう、と。その責任を取るのはやはり自分だと思うのです。決して自分以外のなにかのだれかのせいでない。 そう言って去っていた人の多いこと(大笑)。だから 『桜さがし』 を読んでいて、この浅間寺せんせいの言葉を聞いて(聞いた気になってしまった)、うんうんうんと深く深くうなづいたのでした。私は、そういうオトコが好きなのぅー。あぁっ。悶える。
「夏の鬼」と「片想いの猫」では、中学時代に付き合っていた陽介とあや助の過去と現在の対比となっています。中学時代の恋にいつまでもこだわっていたあや助がやっと新しい恋と出会う。あや助を想い出に変えていた陽介は、道ならぬ苦しい恋に終止符をうつ。「夏の鬼」では、姫だるまが、「片想いの猫」では、赤いタキシードの陶器の猫がKeyとなります。そういう小物使いがまた柴田さまらしくて、京都らしくて素敵v
「梅香の記憶」は、桜さがしの中で一番好きな物語。歌やんとまり恵の恋愛の方向が見えてきます。この物語のラストで言う歌やんの言葉。ほんの一行。もう何度読んでも涙ぼろぼろになってしまいます。このひとことのうまさが柴田さまの魅力。うん、そうよっ! と叫びたくなる言葉を〆に持ってこられる。その瞬間心がぎゅっとなる。
この物語で、浅間寺せんせいのかつての教え子の4人は、それぞれの人生を模索し旅立ちます。浅間寺せんせいのほのかな恋も見え隠れします。それはちょっといやんv 浅間寺せんせいのその後は、『風精の棲む場所』 で知ることができます。柴田さまが、また浅間寺せんせいの物語を書いてくださらないかしら。いつまでも待ってます。
『桜さがし』 2000.5.30. 柴田よしき 集英社
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