酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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この作品は、3年前の第45回江戸川乱歩賞受賞作品です。新野さんは、失踪して放浪しながら、この応募作品を書き上げたという変り種。作家って変わってる・・・(笑)。 3年前に読んだ時には、登場するお笑いコンビがダウンタウンを彷彿させたのですが、今回読み直した時にはどのお笑い芸人さんも浮かびませんでした。その方がいいな。
‘猫は目だけを動かし、視線をよこした’ このフレーズ物語の冒頭シーンです。このシーン、とても深い意味を持ち、最後になるほどvと唸りました。一世を風靡したお笑い芸人が、スキャンダルに巻き込まれ、芸能界から去ります。数年後、かつての相方が主人公が行きつけのBarに現れたことから、封印されていた主人公の人生と言う物語が、Pause解除され一気に流れていきます。
芸能界と言う競争の激しい世界の中での勝者、落伍者、彼らに群がるファン。一度接点を持ってしまうと、この物語のような事件が起こっていても不思議はありません。 自分の驕りや周りに翻弄された主人公が、息を吹き返し、戦い、大切なものを見つける構図は読んでいて気持ちいいです。絡み合う人間関係が解きほぐされていくさまも読み応えあり。オススメのハードボイルド・ミステリーでございます。マルクスの言葉の意味は物語の中で納得してください。
新野さんは、このあと『もう君を探さない』、『クラムジー・カンパニー』、『罰』と出されています。 『もう君を探さない』も好きな作品ですが、まだ『八月のマルクス』 を超える作品を私的には読めていません。今後が楽しみな作家さんのおひとり。
『八月のマルクス』 1999.9.9. 新野剛志 講談社
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