酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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椹野道流(ふしのみちる)さんのことは、以前とある個人サイトに出入りしている時に、同じく出入りされている方から教えていただきました。その個人サイトはこの夏に閉じられたと最近聞きました。また教えてくださった方も今はあまりネットをされておられないご様子。ネットの良さは流れていくことにあると、そこでは教えていただいたのですが、流れてしまって縁が切れてしまうことは寂しいものです。 お元気ですか?
椹野道流さんは、今ふたつの主流シリーズを書かれています。ひとつが、‘奇談シリーズ’、もうひとつが‘鬼籍通覧シリーズ’ です。どちらもとても面白いのですが、今回は出たばかりの、‘鬼籍通覧シリーズ’より『隻手の声』を取り上げてみます。
鬼籍通覧シリーズは、大阪府高槻市O医科大学法医学教室を舞台に伏野ミチルと伊月崇がかかわる事件簿です。死体が語るとか、死体の声に耳を傾けるとか、昨今テレビドラマ等でもおなじみになってきた法医学。現実は人手不足で大変であることがよくわかります。今回は、たまたまネットゲームにはまった伊月が、ネットで知り合った小学生の家庭内暴力を受けていることを知り、現実でも物語がリンクしていきます。今回少々身につまされてしまったのは、《病的酩酊》。 お酒に酔って自分の暴力行為を認識できないというもの。勿論、私は一応女性ですので拳は使わないにしても、言葉の暴力という奴がありますから・・・。お酒に酔った勢いでなにかしでかすのはやめましょう。
‘鬼籍通覧シリーズ’ は、いつもタイトルが深い意味を持ちます。今回のタイトルは隻手(せきしゅ)と読みますが、打ち込むと一発変換されました。が、私は意味を知りませんでした。恥。この物語の内容とタイトルはいいですよ。そうだよなぁって思われること請け合います。読みやすいので、このシリーズ通して是非読んでみてください。 『暁天の星』、 『無明の闇』、 『壷中の天』、そして今回の『隻手の声』です。
また、‘奇談シリーズ’ ですが、私は椹野道流さんはもともとこちらから入りました。こちらは、妖怪やファンタジーやボーイズラブが入り混じっているので、ちょっと駄目と言う方もおられるかもしれません。でもこちらのシリーズのキャラクターもとてもいいので、試しに読んでみられてはいかがでしょうか。こちらは講談社X文庫より『犬神奇談』 まで16冊(上下は1冊で考えました)出ています。孤高の追儺師(霊障を祓う‘ついなし’)天本森が、精霊と人間のハーフ(と言うよりダブル)の琴平敏生と出会って変わっていく様は時系列に楽しんでいただきたいものです。森さんの友人の兵庫県監察医の龍村泰彦は、両シリーズを股にかけて登場するツワモノです。妖魔の小一郎もご主人様の森さんとともにゆるゆると変化していって可愛いです。一番のお気に入りキャラが小一郎。そしてなんといってもがっしり健康元気な龍村あんちゃんです。
さらりと読める物語ですが、心になにかふっと落として言ってくれる作家さんですv
『鬼籍通覧 隻手の声』 2002.9.5. 椹野道流 講談社NOVELS
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